(2021/3/16 05:00)
「見わたせば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける」―。秋の紅葉ではなく、若葉の緑とサクラのピンクが織りなす景色を錦に見立てた古今和歌集の一首である。三十六歌仙でもある作者の素性(そせい)法師は、高台か堂宇の上から京の町を見下ろしたろう。
落語家の名跡である春錦亭柳桜は、この名歌の“本歌取り”だ。亡き先代は「春風亭」で名乗ったが、もともと江戸期から続く風雅な名。今は空き名跡になっている。
落語には春の演目が多い。それも『長屋の花見』『花見のあだ討ち』『頭山/さくらんぼ』『百年目』など滑稽噺(ばなし)の名作がズラリ。素性法師の和歌と同様、浮き立つような気分が背景にある。
同じ春でも、漢詩では“愁い”の色合いが濃い。詩聖・杜甫は『春望』で「国破れて山河在り/城春にして草木深し」と詠じる。陽気でウキウキする春は、サクラを愛する日本文化の発露なのだろう。
コロナ禍で迎えた2度目の花見シーズン。1都3県の緊急事態宣言は継続中だが、街頭の人出はなかなか減らない。落語『花見酒』に登場する兄弟分よろしく、杯を回しのみしてクラスターが発生したら一大事。「春の錦」は混雑を避け、遠くから見渡すことにとどめたい。
(2021/3/16 05:00)
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