(2021/4/1 05:00)
中小企業が事業変革に取り組むうえで、最も重要なのは人である。働き方改革に真摯(しんし)に取り組むことが、将来の成長につながる早道と受け止め、着実に取り組みを進めてもらいたい。
同じ仕事をすれば、雇用形態が正規か非正規かに関係なく同じ賃金を支払う、同一労働同一賃金制度が、きょう中小企業にも適用される。しかし、対応への準備は万全ではなさそう。
日本商工会議所が2月から3月に会員企業に実施した調査では、同一労働同一賃金について、「対応済みまたは対応のめどがついている」と回答した企業は46・7%にとどまった。「内容が分かりづらい」のが未対応の理由のようだ。
厚生労働省のガイドラインでは、通勤手当や福利厚生については、正社員と同一の条件を求めている。一方で、基本給や賞与は、職務内容や業績・成果、配置転換の有無に応じて、支給額に差が生じることを認めつつも「客観的・具体的な実態に照らして不合理なものであってはならない」としており、どのようなケースが不合理で是正すべきなのかについては、明確なルールはなく、各社の判断に委ねられている。
20年10月の最高裁判決で、賞与や退職金などについて、格差を容認する判断が示されたことも、企業を混乱させている。
会社は非正規労働者側から、正社員との待遇差に説明を求められた時に、説明する義務が生じる。どういう根拠で差があるのかを、個々の処遇項目ごとに明確にすることが重要だ。職務内容が同じなら待遇を同じにするという観点に立った人事制度の見直しも考えるべきだろう。
非正規労働者の処遇を改善し、希望すれば正社員へ登用する方策を導入するなど、意欲を引き出し、企業の生産性向上に結びつけるのが、制度の本来の目的であるはずだ。
同一なのに差を認める、とはどういうことなのか。制度を所管する厚労省は、より詳細な手引きを作成し、企業内で混乱が起こらない手だてを講ずるべきだ。経営者も問題から目を背けず向き合ってもらいたい。
(2021/4/1 05:00)
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