(2021/4/9 05:00)
東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が読めなくなった。再稼働前に“病巣”が見つかったことを前向きに捉え、誰もが納得する組織風土を含めた改革を成し遂げるしか道はない。
再稼働に向け準備を進めてきた柏崎刈羽原発で、侵入検知の設備が故障した状態が続いたり、所員が他人のIDで中央制御室に入室するなどの事態が相次いだ。原子力規制委員会は核物質防護事案で最も深刻なレベルとし、核燃料の移動を禁ずる命令を出す方針を決めた。
東電は弁明せず再稼働時期は事実上白紙に戻った。東電は9月23日までに社内調査と第三者の評価を経て、原因究明と再発防止策を提出、規制委員会の再検査を受けることになり、最短でも1年以上かかる見込み。
「他電力で起きないことがなぜ東電では起きるのか、何かがおかしい」―。小早川智明社長は7日の会見で危機感をあらわにした。福島第一原発事故から10年、「福島への責任貫徹」を経営の一丁目一番地とし改革を進めたが、社内に十分に浸透していなかったことを意味する。
今回の事態は、かつてのデータ改ざんや隠蔽(いんぺい)といった悪質性はないにしても、大事故やテロと背中合わせの原発に対し、責任感と意識が低すぎると言わざるを得ない。そのことの方が問題の根は深い。
7日に東電が発表した原因分析の視点に「なぜ、設備の点検・保守が速やかに行われなかったのか?」「なぜ、厳格な警備業務を行えなかったのか?」などが並んでいる。ただ、社内調査で真の原因にたどり着けるだろうか。
トヨタ自動車には「なぜ5回」という考え方がある。「問題が生じたら、なぜを5回繰り返し、真因まで突き止めることで再発させない」というものだ。愚直になぜ、なぜと深く探っていくことで、真因に行き着く。
初期段階から外部の目を入れることも重要だ。小早川社長は「どんな調査をするか進め方の段階から、第三者の視点を取り入れたい」と言う。その方法を誤ることは許されない。
(2021/4/9 05:00)
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