(2021/4/20 05:00)
大きく損なわれてしまったジェネリック医薬品(後発薬)への信頼を取り戻す必要がある。
小林化工(福井県あわら市)が製造した爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤の成分が混入し死亡事故が発生した問題について、外部の調査委員会は16日、「経営陣が違法を認識しながら放置したのが根本原因」とする調査結果を発表した。また、厚生労働省が同社の12品目の製造販売承認の取り消しを決め、同社は自主回収に着手することも発表した。
後発薬大手の日医工も、3月に32日間の業務停止を命令された。承認書と異なる方法で製造したにもかかわらず、適合品となるよう処理していた。日医工は4月に自主回収を決める事態となった。
医薬品への信頼を揺るがす事態であり、両社経営陣の責任は問われてしかるべきだ。
ただ、これらの事案の背景を分析する際は、業界が抱える課題も踏まえる必要がある。
政府は医療費抑制の観点で後発薬の普及を促してきた。2011年9月時点で39・9%だった後発薬の数量シェアは、20年9月に78・3%に達している。
後発薬各社の積極的な設備投資の結果だが、安全性への投資に配慮が及ばないまま成長戦略を描いた感は否めない。
また後発薬メーカーは、新薬の特許が切れる度に扱い製品が増える傾向にある。生産品目を切り替える際は、意図しない成分の混入を防ぐために設備の入念な洗浄や点検が必要だが、経営体力や技術力が十分ではない中で無理が生じている。
従来「後発薬メーカーの数は多すぎる」との指摘が根強い。大手の日医工でも売上高は2000億円に満たない。近年は医療分野が本業でない会社が後発薬に参入する事例も見られる。
長期的な安定供給と品質確保を果たせる企業体質を作り上げる必要がある。合従連衡を含めた選択肢も検討すべきだろう。
医療財政が厳しさを増す中、革新的な新薬に高い薬価をつける余力を捻出する意味でも、後発薬は重要だ。信頼回復に向けた関係者の努力は急務だ。
(2021/4/20 05:00)
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