(2021/4/26 05:00)
世界が温室効果ガスの排出削減を加速する。日本も高い目標を達成しながら経済成長を果たすには、難題が待ち受ける。国民の理解と行動が不可欠だ。
政府は2030年度の温室効果ガスの排出削減目標を、13年度比46%減にすると表明した。現行目標の同26%減から大幅な上積みになる。対策の主体は温室効果ガスの9割以上を占める二酸化炭素(CO2)の削減。中でもエネルギー由来の排出削減をいかに進めていくかだ。
30年はたった9年後であり、革新的技術に大きな期待はできない。それでも50年の実質カーボン・ニュートラルへのマイルストーンと位置付け、技術開発と制度設計を加速すべきだ。
再生可能エネルギーの拡大を急がなければならない。当面の主力は太陽光発電が担うが、適地は限られる。大容量パネルが設置できる遠隔地から需要地への送電網の整備を急ぎたい。住宅への太陽光パネル設置比率を高める施策も必要だ。洋上風力発電も、実現には技術とともに立地地域との調整作業がいる。
天候に左右される太陽光や風力の比率を高める上で重要なのが代替電力の確保。火力発電に頼らざるを得ない。CO2排出削減に貢献する水素・アンモニア混焼技術の導入を急ぎたい。
現実的に排出削減に大きく貢献するのは、安全性が確認された原子力発電の再稼働を着実に進めることだ。足元では国民からの信頼がゆらぎ、稼働はおぼつかなくなっている。
次期エネルギー基本計画で原発の位置付けを明確にし、脱炭素の切り札としての役割をしっかりと説明していかなければならない。50年への道筋を考えれば、より安全性の高い小型モジュール炉など新型炉への転換も着実に進めるべきだ。
世界の主要国は脱炭素へ大きくかじを切った。国際公約であり、達成できなければ海外から高いクレジットを購入してでも埋め合わせなければならない。
世界全体の削減に貢献するのが最終目標である。経済成長と環境は両立できることを内外に示し、諸外国に取り組みを促す役割を果たしてもらいたい。
(2021/4/26 05:00)