(2021/5/10 05:00)
感染力の強い変異株の抑制は長い戦いになる。“出口”を待つだけではいけない。
政府は7日、4都府県に発令中の新型コロナウイルス感染症に基づく緊急事態宣言の延長と、愛知県、福岡県への適用拡大を決めた。期間はいずれも31日まで。百貨店などの大型商業施設への休業要請は時短営業に見直すが、東京都や大阪府は休業継続を要請する。大規模イベントも参加人数を限定して開催できるよう規制を緩めた。
東京都のモニタリング会議が公表するデータによると、新規感染者の半数以上は30代以下。感染経路は家庭内感染が50%、職場での感染が17%である一方、会食は7%となっている。飲食自粛だけでは感染を抑えきれず、無症状の若年層から家族への感染が広がっている。職場でも濃厚接触者間の感染リスクが高まっている。
企業の対策としては、引き続きテレワーク徹底による出社人員の抑制が最も効果が高い。中小企業の実施率は低いが、トップが率先して取り組む姿勢を示すなど実現の方法を考えてもらいたい。国や自治体による補助制度も活用すべきだ。
製造現場はじめテレワークになじまない職場もある。職場での感染は、休憩室や喫煙室のリスクが高いことが分かっている。人数制限や会話を控えるなど地道な対策を徹底したい。
対人サービスや飲食など、事業そのものがリモートで成り立たない業種の苦境は限界に来ている。公的支援を求めるのは当然だが、企業としても限られた顧客数で収益を高める施策を模索すべきではないか。
“危機の常態化”は望ましくない。しかし医療崩壊という最悪の事態を防ぐためには、今後感染増加のたびに抑止策を強めることになろう。産業界としても、中長期的視点で取り組む方策を考なければならない
高齢者向けワクチン接種が本格化するが、予約段階で混乱も生じている。7月末までの完了に向けた体制整備が必要だ。その後の一般への接種では、職域での集団接種など、より効率的な方法も検討してほしい。
(2021/5/10 05:00)