(2021/5/12 05:00)
エアコンや冷凍冷蔵庫は人々が快適に生活する上で欠かせない。しかしそれが地球温暖化を促進する一因となっているのは皮肉だ。温室効果ガスの中で、増加が続く代替フロン(HFC)の排出削減に取り組まねばならない。
2019年のHFCの排出量は二酸化炭素(CO2)換算で4970万トン。これは13年比で54・8%増、18年比でも5・7%増と増加が続いている。用途の大半は、エアコンや冷凍冷蔵庫の冷媒である。冷媒の主流だったフロンが、オゾン層を破壊する物質として生産が中止され、替わりにHFCへの転換が進められたため、増加はある意味やむを得ない面もある。
しかし、2050年の実質カーボンニュートラルに向け、対策の加速は待ったなしである。HFCの排出抑制策にもより高い実効性が求められている。
HFCの成分をより地球温暖化係数(GWP)の低いものへと転換させていく必要がある。現在家庭用エアコン冷媒の多くは、GWP値が675のR32だが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が中心となり、冷媒メーカー、電機メーカーが連携してGWP値10以下の冷媒やエアコンの開発が進んでいる。早期に実用化できれば、国内だけでなく世界市場への展開も期待できる。
業務用エアコンや冷凍冷蔵庫は、GWP値が数千台と高いものも多い。新製品はトップランナー制度で低GWP値型へ切り替えたり、自然冷媒型を普及させる施策もあるが、ビル用空調のように一度導入すれば数十年使い続けられるものも多い。
政府はHFCの生産量そのものを毎年削減していく方針だが、今後削減幅が大きくなれば、既存の建物で使われるエアコンの冷媒が使えなくなったり、高騰したりする恐れもある。早期にHFCの生産と使用に関する将来見通しを示し、空調機器の入れ替えを促進するといった政策の強化が必要だろう。
カーボンニュートラル達成には、CO2だけでなくHFC削減の必要性も広く周知し、国民全体で取り組むことが急務だ。
(2021/5/12 05:00)
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