産業春秋/梅雨の薫風

(2021/5/18 05:00)

「風薫る」は夏の季語。一般に5月の枕詞(まくらことば)のように使われることが多いが、俳諧では初夏に限らず三夏としている。つまり雨がちの時分も酷暑も対象になる。

「天高く」と形容される秋の空気は、さわやかに澄んでいる。それに比べて夏の風はみずみずしく、匂いやかだ。ムっとする草いきれも、川面を吹く涼風も、生気に満ちた薫りを運んできてくれる。

5月から6月にかけ、業界団体や企業が総会シーズンを迎える。新トップの登場というケースも少なくない。交代理由を「若返り」とすることが珍しくないのは、やはり新風が吹き込むことを期待しているからだろう。

唐の文宗は、人々が炎熱に苦しむ中で夏を愛し、長く続くことを願った。時の詩人が皇帝を称(たた)え、南より来たる薫風は心地よいものだと詠んだ。このエピソードは後世、庶民の苦しみを忘れた思い上がりとして批判された。

近畿・東海地方以西が記録的に早く梅雨入りした。関東以北も雨がちな予報が続く。気持ちのいい初夏が幕を閉じ、季節は2度目の“コロナの夏”へうつろう。防衛省のワクチン接種受け付けも始まり、高齢者への接種が蒸し暑さの中、本格化する。深呼吸、マスクの向こうに風薫る―。

(2021/5/18 05:00)

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