(2021/5/20 05:00)
デジタル人材の不足が指摘される中、大学で身に付けるべき素養として注目を集めるのがデータサイエンス(DS)教育だ。eラーニング教材の開発や教員の不足を補い合う、新たな大学連携の推進を期待したい。
数理的思考でデータを扱い、人工知能(AI)などで分析するDSは産業、官公庁、医療など多分野で注目される。そのため「第2の英会話」といわれるほど、学生が広く身に付けるべきだとの認識が高まっている。
政府は内閣府の「AI戦略2019」で、全大学生がリテラシー(読解記述力)レベルの教育を受ける体制づくりに籏を振る。国立大が中心の「数理・DS教育強化拠点コンソーシアム」が教材開発などを先導するが、他の大学に迷いは多い。
例えば総合大学なら教養科目の数理(数学や線形代数など)の教員はいるが、DSやAIに踏み込むとなると心もとない。文科系単科大学は言わずもがなだ。コンソーシアムは各大学が自由に取り入れられるカリキュラムやeラーニング教材を開発し公開しているが、これまで浸透はいまひとつだった。
大学には各科目を「自ら開設する」原則があり、主要科目は専任教員が教える必要がある。しかしその他の選択科目などは、他大学と兼務する非常勤教員が指導できる。コンソーシアムの教材を活用すれば小規模大学でもDS教育は可能なはずだ。
後押しとなるのが新型コロナウイルス感染症で普及したオンライン授業だ。食わず嫌いだったeラーニングの導入で、都市部の企業人を含む専門家に、地方大学が講師を依頼するといった手法も考えられる。
放送大学が今春から始めた講座も有望だ。同大がコンソーシアムと連携し、複数のDS関連番組を制作した。BS(衛星放送)チャンネルの放送番組の視聴に加え、他大学の学生にも有料でインターネット配信による視聴に対応している。
すべての大学がDS教育の質を高めることが、日本のデジタル化推進につながる。各大学の事情に合わせながら、取り組みの加速を検討してもらいたい。
(2021/5/20 05:00)
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