(2021/5/21 05:00)
世界各国でサイバー攻撃の脅威が深刻さを増している。企業個々の努力だけでは対応が困難な事案もある。政府と産業界が連携する体制整備が不可欠だ。
米国で石油パイプラインがサイバー攻撃を受け、一時、出荷を停止した。インドやイランなどでは主要都市の大規模停電や、核関連施設の原因不明事故が発生している。軍事攻撃と違いサイバー攻撃は、攻撃相手を短期間では断定しにくい。
4月に警察庁は宇宙航空研究開発機構(JAXA)や防衛関連企業約200社に、中国人民解放軍の指示を受けたと見られるハッカー集団から大規模なサイバー攻撃があったことを明らかにした。当局がこうした事例を公表するのはきわめて異例。
それでもあえて公表に踏み切ったのは、それだけ攻撃の脅威が重大だと考えているからだ。相手に対する警告と同時に、自国の国民や企業に対しても注意を喚起させる契機になる。
サイバー攻撃ではランサムウエアを送りつけて身代金を要求する攻撃以外に、標的型攻撃による機密情報窃取や、サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃方法もある。標的型方法では被害を受けた側も、なかなか攻撃を受けた事実を発見しにくい。その間に重要機密や図面データが相手に筒抜けになり、丸裸にされ、コピーされる。
「侵入した痕跡を逐一、消去して相手に感づかれないようにする技術も進んでいる」。ITセキュリティーソフト会社の担当者は断言する。「攻撃を受けたが、重要情報の漏出は発見されなかった」とする企業の検査結果もあるが、真実は不明なものもある。
防衛省もサイバー部隊の増強や米軍部隊との共同訓練など対策を急いではいる。ただ、こうした能力強化は一朝一夕ではできない。産業界も業種ごとにサイバー攻撃に対応する組織が発足しつつあるが、活動にはバラつきもみられる。事業継続を脅かす攻撃が常に起こる可能性がある。もし電力や通信インフラがまひすれば国民生活に多大な影響が及ぶ。脅威の認識を一段高めた対応が必要だ。
(2021/5/21 05:00)
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