(2021/6/2 05:00)
東京五輪・パラリンピック開催に向け、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた安全・安心な開催が議論されている。同時にサイバー攻撃への注意喚起をいま一度徹底すべきだ。
サイバー空間では「ランサムウエア」と呼ぶ、身代金要求型ウイルスが今もって猛威を振るい、企業や重要社会インフラが相次ぎ標的となっている。五輪大会のような世界的なイベントも格好の標的といえよう。東京大会の開催を手ぐすね引いて待つ攻撃者がサイバー空間でうごめいている。
五輪を狙ったサイバー攻撃は2012年の英ロンドン大会から本格化し、会期期間中に公式サイトに2億件を超える不正な接続要求があったことが報告されている。当時は、標的とするシステムに大量データを一斉に送り付けてダウンさせる「DDoS(分散型サービス拒否)攻撃」などが脅威だったが、その後、ランサムウエアのような新手の攻撃が続々と登場し脅威が増している。
大会開催中に、電力などの重要インフラへの攻撃で社会を混乱させ、システム復旧による円滑な大会運営と引き換えに、金銭を要求する手口も想定される。「東京五輪がオンライン主体にシフトすると、逆にサイバー攻撃がやりやすくなる」(セキュリティーの専門家)といった指摘もある。
こうしたリスクに、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会や政府、産業界は、5年以上にわたり対策を練り、サイバー演習やセキュリティー人材の育成に力を注いできた。その成果は着実に積み上がっているが、長引くコロナ禍で開催や大会運営の前提が揺れる中、産業界からは「サイバーセキュリティー対策への意識付けが全体的にトーンダウンしている」といった危惧の声もある。
東京五輪・パラリンピック開催まで2カ月を切った今こそ、セキュリティー対策を引き締め直すときだ。アスリートがもたらす感動を世界に伝えるためにも、リアルとサイバーの双方で安心・安全な大会運営に万全を期していきたい。
(2021/6/2 05:00)
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