(2021/6/3 05:00)
コロナ後の世界を見据えれば、ロボット需要が拡大するのは間違いない。技術で世界をリードする日本のロボット産業にとっても飛躍の好機である。
日本ロボット工業会は、2021年の産業用ロボット受注予想を、年初より800億円増の9640億円(前年比12・3%増)に引き上げた。統計を開始した01年以降で最高額となる。世界で市場の回復が進めば業界悲願の1兆円も視野に入る。
産業用ロボット市場が好調なのは、コロナ禍からの回復が顕著な中国や米国で反動需要が急増しているのに加え、自動化ニーズが幅広い産業で高まり、新規の需要増が期待できるからだ。自動車や電機・電子など既存のユーザーに加え、建設や医療、食品など多業種でロボットを導入する動きが見られる。
日本のロボット産業は世界をリードする存在である。ファナックや安川電機などのトップグループのメーカーには、人工知能(AI)やセンシングなど先端技術を取り入れ、世界をけん引する役割を期待する。
同時に、中小企業向けなど、今後需要が拡大する市場への目配りも必要だ。中小企業からは「国産ロボットは高すぎる。デンマークのユニバーサルロボットは価格も使い勝手も手頃」といった評価も聞く。ロボットも大量生産が求められる時代である。高級車だけでなく、軽自動車のようなタイプも投入し、市場のニーズを取りこぼさないようにしたい。
ユーザーとメーカーをつなぐシステムインテグレーター(SIer)や、ロボットハンドなどの周辺機器を開発するメーカーの育成も重要だ。ユーザー教育も欠かせない。中小企業やベンチャーがこの分野に参画しやすい環境づくりを、産業政策として整える必要がある。
半導体産業が、開発の遅れや投資の決断不足から国内メーカーの衰退を招いたように、好調な中にも必ずリスクは内在している。中国市場に過度に依存するのも注意が必要だ。開発や投資のタイミングを最適化し、世界市場を獲得し続ける経営戦略の確立を求めたい。
(2021/6/3 05:00)
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