産業春秋／マスクにＪＩＳ規格

この一年あまり、マスクほど価格変動の激しいものはなかっただろう。新型コロナウイルス感染症が国内で流行し始めた２０２０年春には争奪戦が発生、怪しげな箱入りマスクに５０００円の値が付いたこともあった。今は３００円で店頭に山積みされていても買う人はまばら。

次に問題となったのが品質。パッケージには「ウイルスを９９・９％カットします」と書いてあっても、聞いたこともないメーカーだとためらわれる。買ったものの、開いてみたら向こうが透けるようなしろものだったという苦い思いも味わった。

国はマスクに日本産業規格（ＪＩＳ）を制定した。これまで産業用マスクにＪＩＳはあったが、医療用や一般用マスクには業界の自主基準だけだった。ＪＩＳ化に動いたのは、消費者の品質への不安の高まりを放置できないとの判断からだ。

明日から日本衛生材料工業連合会で、ＪＩＳ規格の適合性審査の受け付けが始まる。多くのマスクメーカーが認証取得に動き、秋にはＪＩＳ表示付きマスクが市場に登場する見込み。

感染症の専門家は、新規感染者が減少してもマスクの着用はまだまだ必要と訴える。安心してマスクを選択できる環境が整う日を待ちたい。