(2021/6/24 05:00)
高齢者に就労機会を提供するだけでなく、生きがいを持ち続けたまま年を重ねる環境と支援の仕組みを整えるべきだ。
内閣府の2021年版高齢社会白書によると、60歳以上を対象にした国際調査で今後も「仕事をしたい」と答えたのは日本人は40・2%。米国は29・9%、ドイツは28・1%。日本人の就労意欲は年を重ねても高い。
問題なのは働き続ける理由。米国とドイツは「仕事が面白く、自分の活力になる」という回答が最も多いのに対し、日本では「収入がほしい」と、稼ぎに軸足を置く人が半数を占める。
背景にあるのは経済的な不安だ。日本の場合、主な収入源の67・4%は公的年金。支給の先行きに不安を抱く高齢者は多い。22年度後半から一定以上の収入がある75歳以上を対象に医療費の窓口負担2割引き上げも決まった。「働かざるを得ない」と考える人は、年を追って増えている。
国は健康で意欲と能力がある限り、働き続けられる社会づくりを進めている。少子化に伴い、高齢者を積極雇用し、社会参加を促す思いは分かる。だが、退職し社会とのつながりが途切れた途端、存在価値を見いだせず、不安で立ち尽くす高齢者も忘れてはいけない。
65歳以上の高齢者は全人口の28・8%。その一部でも不安にかられ、自死などの問題につながるのは避けたい。在職中のミドル層から人生を再設計し、退職後も途切れなく続く自身のシナリオを描き直すべきだ。老後に向けた“助走期間”を確保し、自分に向き合う時間をつくれば、進むべき道筋も見えてくる。そうした取り組みを企業や社会が促し、相談に乗って支える仕組みも必要だ。
家族以外に親しい友人がいない人は全体の31・3%で、5年前に比べ5・4ポイントも増えている。政府は2月に「孤独・孤立対策担当大臣」を置いた。高齢者の見守りや居場所づくりに力を入れ、一人でも多く輝き続けられる社会を目指すべきだ。
「現在の生活に満足」と答えた高齢者は81・6%。10年、20年後へ数値をさらに高めたい。
(2021/6/24 05:00)
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