(2021/6/25 05:00)
LGBTなど性的少数者の理解増進を目的とした法案は、超党派の議員連盟でまとめたにもかかわらず前国会への提出が見送られた。経済活動でも人権尊重の国際潮流が強まる中、次期国会での成立を目指すべきだ。
野党側が国会に提出した「差別解消法案」は企業へ報告を求め、助言、指導、勧告などができる内容だった。だが自民党が消極的だったため理念中心の内容に改まった経緯がある。
ところが基本理念に盛り込まれた「差別は許されない」との表現をめぐり、自民党内の議論は紛糾する。「行き過ぎた差別禁止運動につながる」「訴訟が増える」などの批判が相次ぎ、提出は見送られた。
企業や社会が性的少数者を受け入れる方向へ価値観を変えるには長い時間を要する。その起点となる法整備が遅れ、差別や偏見の解消が遠のいたのは残念と言わざるを得ない。
電通が2020年12月に実施した調査によると、LGBTを含む性的少数者の割合は8・9%を占める。少子高齢化に伴い労働力人口の減少は加速している。企業が生産性や創発力を高め、持続可能な成長を図るには、性的少数者が働きやすい環境の整備を急ぐ必要がある。
一方で、性的少数者をめぐる問題は把握が難しく、企業の対応が遅れてもマイナス面は表面化しにくい。性的少数者の約6割はカミングアウトをせず、特に職場では避ける傾向が強いとの調査結果もある。
制度を設けても性的少数者を受け入れる風土が醸成されていなければ機能しない。同性パートナーシップ制度や性別適合手術のための特別休暇制度を導入する企業は増えている。だが企業の人事制度に詳しいコンサルタントは「利用は進んでいないのが実態」と指摘する。
法案の早期成立により初めの一歩を踏み出すことに意義があろう。むしろ理念法から始めて、社会の情勢変化や要請に応じて規制や罰則を加えていく、段階的な法整備が望ましいのではないか。企業にとって訴訟対応などで判断基準となる法律が存在しない状態は心もとない。
(2021/6/25 05:00)
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