(2021/6/29 05:00)
計算速度に加え、使いやすさや省電力を追求した上での快挙を高く評価したい。
理化学研究所と富士通が共同開発し、3月に本格運用に入ったスーパーコンピューター「富岳」が計算速度を競う世界ランキング「トップ500」で3期連続の世界第1位(V3)を達成した。
スパコンを巡る開発競争は日米中の三つどもえの構図で、次の目標は「エクサ(100京)」スケール(規模)とされている。富岳はアプリケーション(応用ソフト)性能で前機種「京」の100倍を掲げるが、1秒当たりの計算速度は約44・2京回(京は1兆の1万倍)とエクサスケールには届いていない。このため、1年前には富岳が世界最速を名乗っていられる期間はそう長くないとの見方もあった。
だが、エクサの壁は予想以上に高く、富岳は、V2達成で終わった京の記録を上回る成果を実現した。また、産業アプリの処理速度を評価する「HPCG」や人工知能(AI)の計算性能を示す「HPL―AI」、省エネ性能を示す「Graph500」も各1位を堅持し、トップ500も含め、“3期連続4冠達成”という快挙となった。
V1からV3まで1年余にわたり、富岳はウイルス飛まつの可視化などを通して、感染予防に貢献してきた。こうした喫緊の社会課題に迅速に対応できたのも、富岳の特性である「プログラミングのやりやすさ」があってこそといえよう。
次は用途展開だ。すでに理研を中心に次世代コンピューティング研究や災害リスク評価などの学術研究に加え、産業分野の研究も動きだしている。
メーカーである富士通も、富岳とその商用機である「プライムHPC」を対象に、航空機の熱流体解析や自動車の衝突安全性向上などの商用アプリの動作検証を、ソフトベンダー各社とともに推進している。
世界最速マシンといっても使われなければ意味がない。わが国が目指す超スマート社会「ソサエティ5・0」に向けて、富岳が担う役割を広げたい。
(2021/6/29 05:00)
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