(2021/7/8 05:00)
また痛ましい災害が起きた。静岡県熱海市の大規模な土石流だ。断続的に雨が降り続く中で懸命の捜索活動が続けられている。二次災害に十分に注意し最善を尽くしてほしい。そして原因をしっかり解明し、同様の災害が起こらない対策が必要だ。
今回の土石流が起きた現場では、1時間に30ミリを超える激しい雨は降っていなかった。ただ、数日間に平年の7月の1カ月分を超える降水量だった。現場は土砂災害警戒区域に指定されていたとはいえ、小雨の日に突然、2キロも離れた山の上から土石流が押し寄せるとは想像しづらい。
土石流が起きた最上部では深層崩壊が起きていた。その場所は人工的に盛土がなされており、大量の水分を含んだ土砂が流れだして被害を大きくした。国土交通省によると、同様の大規模盛土は全国に5万カ所以上ある。赤羽一嘉国交相は全国の盛土を総点検する考えを示した。宅地造成に関わる盛土は都市計画法や宅地造成等規制法で厳しく規定されており何度も検査を受けるが、そうでない場所は特段の注意が必要だ。
今回の現場も最初の業者は熱海市に宅地造成を含めた開発許可を取ったが、宅地化をあきらめて木くずなどの産業廃棄物を埋設していたようだ。市は取り除くよう指示したが業者は倒産、次の所有者も十分な対策をせずに今回の事態が起きた。土石流と盛土の因果関係を科学的、工学的に原因究明することを前提として、そこに業者や行政の対応に問題がなかったのかも丁寧に検証する必要がある。全国に同様の事例がいくつもある可能性は高い。
深層崩壊が起きた場所の災害前の空撮映像を見ると、段々畑のようになっている。近年、こうした場所での大規模な太陽光発電をよく見かける。山を切り開き伐採すると、樹木の持つ洪水の軽減、渇水の緩和、水質保全の機能が奪われる。林野庁は太陽光発電のために保安林の一部解除も検討しているようだ。二酸化炭素の削減は重要な課題だが、人の命に関わる防災を何より最優先する必要がある。
(2021/7/8 05:00)
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