(2021/7/20 05:00)
人権問題が企業の将来性に影を落としつつある。脱炭素や省エネなど環境規制対応には積極的な日本企業も、この問題にはどこか及び腰だ。
欧米では人権と環境対応は同じくらいの重要な関心事になっている。日本が蚊帳の外に置かれたまま、人権侵害国の片棒を担いでいると非難を浴びないためにも、供給網全体の再調査が欠かせない。
ファーストリテイリングが、中国の新疆ウイグル自治区産の綿製品を使用した疑いで米国とフランスから輸入差し止め措置を受けた。同自治区では日常的に強制的な労働で原料を生産しているとされる。同社は人権問題にあたる事実はないと主張するが、十分な証明ができなかった。他にもアパレル、日用品企業などの企業の名が上がっている。同様の批判を受けたグンゼやミズノ、カゴメなどは、使用を中止して他国の材料に切り替えた。しかし、いまだに対応方針をはっきり表明していない企業も少なくない。
数年前まで安価な労働力と国内市場を武器に“世界の工場”を自負してきた中国も、最近は人件費が上昇して競争力を失いつつある。代わって台頭してきているのはインドやベトナムなどの新興国だ。
企業は常に安価な原料の供給源を求めている。しかし立場の弱い途上国が、自国の労働環境を犠牲にして先進国企業の強い要求に応えるようなケースでは、発注する企業側に責任が問われる。政府はこうした動きをとらえ、自国の企業を支援する方法を考えなければならない。
具体的には国連や経済協力開発機構(OECD)など国際機関と協調し、人権侵害リスクのある国や団体とは取引を手控えると同時に、代替先を見つけたり調査したりする際の資金や人材面での援助が必要だろう。
独裁政権や人権侵害リスクの高い国は世界各地にある。そうした国の依存度を減らすのは民間企業の努力では限界があり、各国と連携した政治・外交の支援が不可欠だ。国と企業とが一体となり、人権侵害リスクを乗り越えていってもらいたい。
(2021/7/20 05:00)
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