(2021/9/8 05:00)
最低賃金が10月上旬にかけて引き上げられる。コロナ禍の長期化で厳しい経営に直面する中小企業にさらなる負担を迫るのなら多面的な支援が不可欠だ。
2021年度の最低賃金の議論は40都道府県が国の目安通りに前年度比28円の上昇、7県はこれを上回る引き上げ額で決着した。20年度は新型コロナウイルスの感染拡大で上げ幅の提示が見送られたが、一転して大幅な賃上げ路線が復活した。
全国の加重平均の時給額は930円で、引き上げ額は政府が「目安」を示す現行制度が始まって以来の過去最高を更新、上昇率は3・1%となった。
もちろん、余力のある企業は将来の成長の原動力として、大胆な賃上げを進めるべきだ。
だが、経営実態と乖離(かいり)した急激な引き上げは中小企業の存続そのものを危うくする。セーフティーネットである最低賃金が「年3%程度」の賃上げ実現を目指す政権の政策手段に利用されている実情や、助成金を通じて何とか雇用を維持する企業に賃上げを迫る政策的な矛盾に違和感を覚える。
中小企業の賃上げ環境を整えるため、政府は生産性向上と賃上げを促す「業務改善助成金」の要件緩和や各種支援策の周知徹底を打ち出してはいる。だが、中長期的な企業競争力の向上につながるものでなければ持続的な賃上げは成し得ない。中小企業の強みである機動力や柔軟性を一層発揮できるよう、規制改革や下請け取引適正化対策も必要になろう。
議論のプロセスそのものにも禍根を残した。最低賃金は有識者からなる公益委員と経営側、労働側が議論し、全員が同意するのが本来のあり方だが、異例の「採決」や反対の意を表明しての「途中退席」が相次ぐ事態となった。企業経営や暮らしに直結する賃金を政府方針ありきの審議に形骸化させてはならない。
今後、ワクチン接種が進み経済活動が平常化したとしても、業種、業態や企業規模によって業績回復の足取りには違いがみられるだろう。
間もなく発足する新政権には実情に即した政策を望む。
(2021/9/8 05:00)
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