(2021/9/20 05:00)
「世代交代や若い経営者にバトンタッチする若返り人事が良いことのようにされているが、本当に時代に合っているのだろうか…」。ある食品会社のトップが、こんな疑問を漏らした。
日本社会の高齢化は加速度的に進行しており、総人口に占める65歳以上の割合は3割に迫る勢いだ。このトレンドは先行きも継続が見込まれ、日本の将来は「限界集落」の構造に近づく可能性も指摘されている。
当然ながら国内市場の年齢構成は高齢者中心になる。この変化を踏まえれば、商品開発やマーケティングも高齢者を主要なターゲットとして構築することが必要になる。
加齢による身体能力の衰えや健康の不安、嗜好(しこう)の変化は高齢になって初めて自覚することが多いもの。働き盛りには分からないことも多い。それなのに企業トップが若返りを性急に進めれば、「市場にマッチした商品供給がなされるかどうか、はなはだ疑問だ」と冒頭のトップは懸念する。
「老害」という言葉だけで、市場ニーズを最も知る長寿の経営者を排除するのは得策ではなかろう。きょうは「敬老の日」。周囲が古老を敬うだけでなく、高齢者が自らの知恵と経験を誇る日とすべきではないだろうか。
(2021/9/20 05:00)