(2021/9/24 05:00)
大きな課題がない時こそ、変化を先取りする議論が必要だ。
年末の税制改正に向けた準備が進んでいる。各省庁は予算の概算要求と並行して改正要望を提出。産業界からも要望が相次いでいる。しかし具体的な中身では、焦点になりそうな項目は見当たらない。
経団連は要望項目の筆頭に「法人実効税率」を掲げた。安倍晋三前政権で過去最低水準への引き下げが実現したテーマを再び掲げたのは「税率見直しの議論の浮上を警戒した」(事務局)ためという。
日本の法人実効税率は低下したとはいえ、近隣諸国より高水準にある。コロナ禍の財政出動の穴埋めとして、収益力のある企業が狙われることへの警戒は理解できる。しかし現行制度の維持を求めるだけでは守りの議論でしかない。
一方、日本商工会議所の要望のトップは「中小企業の事業継続・雇用維持」。経済の長期停滞が予想される中で税制面からも支援を強化するとともに、2023年に導入予定の消費税のインボイス制度の凍結などを求めている。飲食やサービスなどコロナ禍で傷ついた中小への支援が重要なのは当然だが、内容は例年の延長線上だ。
むしろ今年の税制要望では、経団連が炭素税について、前年より前向きな姿勢を示したことが注目される。経団連は「議論の本番は2023年ごろ」(事務局)と予想する。エネルギー課税に関しては産業界の中にも多様な意見があり、その時期までに要望や導入条件について意見集約を図る必要があろう。
先進国を中心に、デジタル経済と国際課税の見直しが進んでいることも注視したい。従来のような租税回避型の海外事業が規制され、国境を越えた「ミニマム課税」を導入する議論が進んでいる。残念ながら日本企業の収益率が高くないこともあって、この分野の検討では欧米諸国に劣後している。
淡々と進む税制改正の準備の裏で、新時代の大きな潮流が動いている。政府も産業界もしっかり勉強し、意見を交わしておく時期ではないか。
(2021/9/24 05:00)
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