社説/クリエイターの活用 新事業に “かかりつけ” の役割を

(2021/12/30 05:00)

新事業の創出や既存事業の高度化を図る上で、クリエーティブ産業やクリエイターとの連携は有効だ。しかし現状は企業、クリエイター双方が課題を抱えており、ミスマッチが生じている。双方の理解が不可欠だ。

クリエイターに明確な定義はないがソフト系IT、デザイン、編集、広告、映像、写真、印刷などに携わる企業や個人を指す。都市型産業なので大都市に集中しており、産業センサスによると、大阪府には1万5000事業所、20万人のクリエイターが活動している。

クリエイターと企業を結びつける試みは各地で取り組まれているが「クリエイティブネットワークセンター大阪・メビック」は大阪で19年活動している。メビックがきっかけで生み出されたコラボレーションは2020年12月までで累計4000件、事業創出額は11億円に達する。これは報告ベースなので実際はこの1・5倍ほどはあると推測されている。

実績は着実に増えているが課題もある。企業のクリエイターに対する認知度はまだ低い。報酬がよく分からないという疑問もある。自社が抱える課題を明確にしなければコラボレーションは始まらない。一方クリエイターも専門用語を乱発するのではなく、重要性や意義を丁寧に説明する姿勢が重要だ。同時に企業の抱える課題を探る努力も求められる。

メビックの堂野智史所長は「かかりつけ医ならぬ『かかりつけクリエイター』」を提案する。病気になってから病院に駆け込むのではなく、懇意にしている医師がいれば気軽に相談できる。クリエイターも同じで、一つの課題が解決すれば関係が終わるのではなく、仕事以外の関係を築くことは有用だ。

企業が抱える課題は多様化しており変化も早い。それに対応するためには企業も多様な人材が必要だ。しかし1社で大量のスタッフを抱えるのは現実的ではない。クリエイターのネットワークを生かせば変化に応じた最適な体制を瞬時に組むことができる。クリエイターの活用は経営資源の補強につながる。

(2021/12/30 05:00)

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