(2022/3/30 05:00)
円安の進行による日本経済の減速が懸念される。輸入物価の上昇に拍車をかける「悪い円安」は短期および中長期の施策で軟着陸を目指したい。
短期的には、岸田文雄首相が29日に指示した追加経済対策を軸に、原油・原材料価格の高騰による企業・家計への影響を緩和したい。3月末の時限措置である石油元売り会社への補助金給付を4月以降も継続することを確認するほか、中小企業への資金繰り支援なども検討する。これら施策の迅速な執行が求められる。
産業界には積極的な賃上げにより、実質所得を引き下げない企業努力が期待される。日銀も「黒田ライン」と呼ばれる1ドル=125円を超えた同130―140円といった円の急落時には、円買い・ドル売りの為替介入も選択肢の一つになるとみられる。日銀は東日本大震災発生後の2011年11月以降、為替介入を行っていない。効果は一時的とみられるが、行き過ぎた円安には市場にメッセージを発信することも必要だろう。
今回の円安への局面変化は、日米金利差が今後さらに拡大するとの市場の受け止めが背景にある。主要国がインフレ緩和に向けて金融引き締めに動く中、日銀は長期金利の上昇を抑えるため、国債を一定の利回りで無制限に購入する指し値オペ(公開市場操作)という、主要国とは真逆の金融緩和策を31日まで実施する。円高に誘導する金融引き締めは視野にないようだ。
対外純資産残高が世界一の日本の円は、これまで安全通貨とされた。だがウクライナ情勢の悪化による資源価格の高騰を受け、1月は2カ月連続の経常赤字に転落し円売りが加速。為替水準そのものを是正するのは難しい状況で、インフレを緩和する追加経済対策と賃上げに頼らざるを得ないのが実情だ。
中長期的な視点では、日本企業の技術革新と生産性向上を促す施策を進め、相対的な円の価値を高めたい。20年の国内総生産(GDP)で世界3位の日本も1人当たりGDPは24位。円の魅力が薄れたままでは有事でも買いづらい状況が続く。
(2022/3/30 05:00)
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