産業春秋/富士山噴火史の教訓

(2022/4/7 05:00)

「十六世紀にも十八世紀にも活動したものが二十世紀の千九百何十年かにまた活動を始めないと保証しうる学者もないであろう」(1931年『時事雑感』)。物理学者の寺田寅彦は汽車の窓から夕日に染まる富士山を仰ぎ、噴火の危険性に考えを巡らせている。

静岡、山梨、神奈川の3県と国などでつくる富士山火山防災対策協議会は新たな避難計画の最終報告を本年度中にまとめる。中間報告では避難対象者が80万人余りに上り、溶岩流は噴火から最短24時間で神奈川県北西部に到達することも。

芙蓉建設(山梨県富士吉田市)は事業継続計画の強化を迫られる。国や自治体と結んだ災害協定で地域の復旧に貢献できるよう従業員の命や重機などを守るための対策を年末までに講じる。

火山災害は特有の課題と対策がある。降灰が雨で水を含むと四輪駆動車でも走行不能に。製造業では機械や屋外の電力設備をカバーで覆えば降灰付着による漏電被害などを防げる。部品調達先や輸送路の代替策も用意しておきたい。

寺田博士の直感は幸運にも外れたが、天災は忘れる間もなくやってくる時代になった。津波災害史の教訓をおろそかにした東日本大震災の過ちを繰り返さないようにしたい。

(2022/4/7 05:00)

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