(2022/4/22 05:00)
加工や設計などを行う製造業の基本は図面から始まる。図面無くして、見積もりや価格の決定はできない。
ただ、紙ベースでのやりとりが多い図面の業務は属人化しやすい。例えば、過去に対応した似た図面があっても、担当者が異なれば、見積もりに誤差が生じる。また、新規図面なのか、既存図面なのかよくわからないため、過去の図面を探す時間的コストも必要になる。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が各産業で進む中、製造業の基本である図面に関する業務の効率化は避けて通れない。
テクノア(岐阜市)は人工知能(AI)を使った、AI類似図面検索でこの課題を解決する。
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「図面検索で『形状』を認識するサービスは珍しい」。テクノアの西村恭範事業部長はAI類似図面検索の特徴をこう話す。既存の同様のサービスは、図面登録時に設定したキーワードなどを参照することで検索機能を実現する。
AI類似図面検索では調べたい図面を、部品の局所的な形状と全体的な形状を同時に捉えるAIによって分析。導入企業が検索したい図面をAI類似図面検索にドラッグアンドドロップするという簡単な操作だけで、過去の図面から似ている度合いをパーセントで表示する仕組みだ。
これにより、ノウハウを持った一部の担当者しかできなかった見積もり作成などを効率化する。西村事業部長は「中小の金属加工業では、2年に1度ぐらいしか依頼がない顧客は珍しくなく、見積もりが担当者によってぶれることがある」と指摘する。担当者によって見積もりの価格が異なれば、依頼した企業の信用問題につながる。AI類似図面検索はそういった担当者ごとの見積もり金額のブレを無くすことで、取引先企業の信頼を獲得し、時間的コストの問題を解決する。
AIの利用には結果の判断軸になるモデルの作成が重要になる。テクノアは顧客の持つ図面を、AIの学習を訓練するのに使う「教師データ」にする。約1万枚あれば、モデルの作成には十分だという。ファイル形式がPDFやPNGのように混在している場合も、一度に処理できる。また、金額やその他の情報を紐づけられ、図面を起点にしたデータ管理も可能。紙での図面管理が不要になる点もAI類似図面検索の魅力の一つだ。西村事業部長はPDFなどでデジタル化されているケースも多いとした上で、「AI類似図面検索とこれまでの自社データを組み合わせて、生産性の向上や効率化に使ってほしい」と強調する。
テクノアのAI類似図面検索は客先図面での加工を行う中小製造業のニーズにマッチしている。というのも、機密性の高い客先から預かった図面は自社内のサーバーで管理されるようになっているので漏洩の危険性が低い。一方、プログラムなどはクラウドで管理され、常に最新のアプリケーションが利用できる。機能追加も積極的に行われ、例えば、取り込んだ図面にさらに材料などの情報を付与することで絞り込みが簡単になった。図面を探すというアナログの作業をDX化する恩恵は計り知れない。
AI類似図面検索参考動画
正規リリースに先駆けて行ったトライアル企業の募集では、同社が想定をしていた5倍ほどの申し込みがあった。今後は中小の金属加工などを手掛ける企業を中心に拡販する。初期費用がAIのモデル作成を含め、110万円(消費税込み)から。ソフトウエアの月額利用料は、1か月3万3000円(消費税込み)から。
(2022/4/22 05:00)