(2022/5/6 05:00)
日本企業に被害が及ぶ事態は決して許されない。
韓国の第20代大統領に尹錫悦(ユン・ソギョル)氏が10日、就任する。事前に国会副議長を代表とした政策協議代表団を派遣し岸田文雄首相らと対話するなど、日韓関係の修復の意気込みを示した。
日本としても、このチャンスを生かしたい。しかしながら両国の立場の隔たりは大きく、かつてのように政治的な意思だけでは歩み寄りが難しい。
産業界から見た日韓間の最大の課題は、いわゆる徴用工判決だ。韓国の最高裁判所である大法院で、戦時中に日本企業に徴用された元工員に対する賠償判決が確定している。両国政府が日韓請求権協定で「解決ずみ」としていた問題であり、明らかに国際法に反する判断だ。
日本企業は命令に応じておらず、韓国側は日本企業の資産を差し押さえて売却手続きを進めている。しかも複数の企業に対する裁判が進行中だ。
一方で、最高裁判決と異なる地裁判決や資産売却を認めない判断が出るなど、韓国の司法界は混乱している。とはいえ資産を差し押さえられた日本企業に不当な損失が及ぶ懸念は変わっていない。この“トゲ”を抜くことは韓国の責任だ。
日本政府としても、韓国に解決を求める姿勢を崩してはならない。日本企業の被害懸念が残る中で、経済活動の正常化は望めない。
他方で韓国は、日本が半導体素材などの輸出管理を厳格化したことを「輸出規制」として反発している。日本の判断は韓国の体制不備が理由であり、問題が改善すれば元に戻すことは可能だろう。こうした実質的な変化を期待する。
韓国の世論は、竹島の領有権など多くの対日問題をひとつのフレームでとらえがちだ。韓国政府は自国民に対し、個々の問題の合理的な判断を説明しなければならない。そうしてこそ日本も譲歩に動ける。経済活動の正常化は両国産業界に共通する願いである。その関係が定着すれば、韓国が期待する日本との通貨スワップ協定も見えてこよう。韓国政府の決断を望む。
(2022/5/6 05:00)