(2022/5/13 05:00)
バイデン米政権が打ち出した新たな経済圏「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」が月内に発足する見通しだ。人権や民主主義などの価値観を共有する国・地域が、貿易やサプライチェーン(供給網)などで連携を強化する。中国への経済依存を緩和する取り組みとして期待したい。
新たな経済圏は、米国のほか日本、豪州、東南アジア諸国連合(ASEAN)、韓国などの参加が想定される。デジタル経済の推進や貿易・供給網および脱炭素などで連携を強化する。
ただ米国の思惑から、関税引き下げといった市場開放策は想定していない。米国は、雇用への影響を懸念する労働者が自由貿易協定に反発し、環太平洋連携協定(TPP)に復帰できずにいる。新経済圏は市場開放を伴わない次善の策といえる。
中国との貿易量が多いASEANには魅力に乏しい経済圏に映りそうだが、ウクライナ情勢やコロナ禍も見据え、供給網の寸断回避といった経済安全保障の輪を広げてもらいたい。
中でも半導体は日米が次世代半導体の開発で協力を進めており、台湾や韓国の企業とも提携すれば中国には大きな脅威になる。韓国にとって中国は半導体の最大の供給国だが、21日に予定する米韓首脳会談を機に協議を前進させてもらいたい。
今回の新経済圏は、バイデン米政権が2月に発表した「インド太平洋戦略」の中の経済分野にすぎない。同戦略は、インド太平洋地域で影響力を拡大する中国が、この地域の規制や規範を変更しかねないとの警戒感が背景にある。中国による東シナ・南シナ海への海洋進出や台湾有事への懸念、さらに南太平洋のソロモン諸島との安全保障協定の締結など、米国には看過できない課題が山積する。
米国主導で地域の安全保障を強化する。また日韓と連携して朝鮮半島の完全非核化を目指すほか、国境を越えた脅威である気候変動対策は中国にも促し、地域の排出量ゼロを目指す。
新経済圏の発足は、新たな国際秩序の形成に向けた一歩として期待したい。
(2022/5/13 05:00)
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