(2022/6/7 05:00)
政府が7日に閣議決定を予定する「新しい資本主義」実行計画には、二極化する中小企業政策が盛り込まれる。スタートアップを育成する一方、過剰債務に悩む中小企業の私的整理に向けた法制度を検討する。スタートアップが新たな価値創造を担い、経営が厳しい中小企業は事業再構築を進めることで産業全体の活力と成長を促したい。
実行計画案では、従来の規模拡大を重視する視点から、新規創業を重視する視点への転換を図り、新たな価値創造を目指す考えが示された。企業の参入率と退出率の合計(創造的破壊の指数)が高い国ほど経済成長率は高いと指摘。日本の開業率が欧米より低く、スタートアップ数を5年で10倍に増やす5カ年計画を年末に策定するという。
スタートアップと大企業の連携を促すほか、優れたアイデア・技術を持つ若手人材への支援拡大、海外における起業家育成の拠点創設、スタートアップが集積するキャンパスづくりの推進、拙速に株式上場を強いない未上場株のセカンダリーマーケットの整備などを進める。スタートアップの創業促進により、社会的課題の解決につなげる必要がある。
一方、日本企業の債務残高はコロナ禍前に比べ70兆円以上増加し、中小企業の34・5%が事業再構築の足かせになっている。実行計画案では、債権者との協議で債務を減免し、経営者の退任も問わない形での私的整理を推進する考えが示された。法案の早期国会提出が待たれる。
実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の本格返済を控え、資金繰りに悩む中小企業は少なくない。コロナ後を見据え、中小企業が新陳代謝を進める前段階として中小企業支援の強化を進めてもらいたい。ただ中小企業がモラルハザード(倫理観の欠如)に陥らないよう留意する必要もある。
日本経済のダイナミズムを促すスタートアップの創出と、スタートアップでもベンチャーでもない中小企業の事業再構築―。両にらみの政策により、産業界は日本経済再生に向けた新たな局面に入りたい。
(2022/6/7 05:00)
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