(2022/6/15 05:00)
加速する円安と物価上昇が、中小企業に及ぼす負の影響が懸念される。仕入れコストの上昇分の4割しか価格転嫁できず、企業倒産も5月に増加に転じた。政府は岸田文雄政権の看板政策「新しい資本主義」実行計画で示した取引適正化に向けた対策を早急に実施し、中小企業経営を下支えしてもらいたい。
高原状態にあるエネルギー・原材料価格は円安の逆風によりさらに割高となり、内需主導型が多い中小企業の経営には大きな重しとなっている。問題は、仕入れコストの上昇分を十分に価格転嫁できていない現実だ。
帝国データバンクによると、仕入れコストの上昇分を「多少なりとも転嫁できている」企業は73・3%に達するが、価格転嫁率は44・3%とコストの4割しか転嫁できていない。残る6割は中小企業の負担になる。「全く価格転嫁できていない」企業が15・3%を占めている点も気がかりだ。
企業の倒産件数も、2021年(暦年)は政府の手厚いコロナ禍関連の助成金や実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)により半世紀ぶりの低水準だったが、22年5月は単月ながら12カ月ぶりに増加に転じた。ゼロゼロ融資は年末に向けて返済が本格化し、中小企業の資金繰りが懸念されている。
政権の「新しい資本主義」実行計画は取引適正化に向け、22業種の受発注企業を対象に、独占禁止法の優越的地位の乱用に関する調査を行い、ガイドラインを作成するとした。また発注企業が取引適正化を宣言する「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業による実行状況も調査するという。
政府はすでに買いたたき防止などを約1700関連団体に要請したほか、取引実態を調査する「下請けGメン」も22年度に倍増した。これら施策も併せて中小企業の事業環境を改善させることが求められる。
バブル崩壊後の長期のデフレが、中小企業の価格転嫁力を低下させたとの指摘もある。デフレ脱却とは言えない「悪い物価上昇」局面ながら、取引適正化を定着させる機会としたい。
(2022/6/15 05:00)
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