(2022/9/26 05:00)
1972年の日中国交正常化から29日で50年を迎える。「政経分離」の原則により、両国はイデオロギーを超えて経済で協調し、互いに発展してきた。だが2010年を境に、中国は経済を政治の“武器”とし、経済安全保障が新たな課題に浮上した。台湾有事もくすぶる。隣国の大国といかに向き合うべきか。非安保分野で両国間の信頼を醸成し、新たな共存・互恵の枠組みを模索したい。
日本は高度成長の“バトン”を中国につないだ。73年の第1次石油危機で高度成長が終わった日本に対し、中国は日中国交正常化を起点とする改革開放路線で高度成長を実現する。80年代は日本の技術支援と政府開発援助(ODA)が中国を支え、両国は蜜月の関係にあった。
89年の天安門事件も、翌90年には日本は中国への円借款を再開。中国の孤立化を避けた対応で、01年には日本の後押しもあって中国は世界貿易機関(WTO)への加盟が認められた。中国が世界経済への依存度を高めれば、民主主義や自由も尊重すると期待したからだ。
ところが10年に期待は裏切られ、政経分離の原則が終わる。中国が国内総生産(GDP)で日本を抜いて世界2位に躍り出た年だ。尖閣諸島周辺で中国漁船と海上保安庁の船舶が衝突。漁船船長逮捕に対し、中国はレアアース(希土類)の対日輸出を停止し、貿易を武器とした。経済成長に自信を深め、強硬路線にかじを切ったのは残念だ。
中国が世界の供給網と強力につながり、世界経済は中国抜きに語れなくなった。中国にとっても“もろ刃の剣”になる。中国がウクライナ情勢でロシアへの軍事支援に慎重なのは、経済で溶け込んだ西側諸国による経済制裁を恐れているためだ。
米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」が台湾有事も見据え、中国に依存しない供給網を構築するのは適切な判断だ。だがGDP2位の中国抜きに世界経済も日本も円滑に機能しない。日中は50年前の国交正常化の原点に立ち返って対話を重ね、非安保分野で互恵の道を探りたい。
(2022/9/26 05:00)