(2022/10/6 05:00)
2022年のノーベル賞の自然科学3賞では、日本人の受賞はならなかった。優れた業績で期待された研究者も多かっただけに、残念に思う。
数値で振り返ると、13年からの10年間の受賞者は外国籍を含めて9人。その前の03―12年が7人であり、受賞ペースとしては大きな違いはないようにも見える。
ただ、21年に物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏は大学院までの教育を日本で受けたものの、その後に米国籍となり、受賞理由となった研究の基盤も米国にあった。日本の学界が世界に貢献したとは言い切れない。
日本人の自然科学3賞受賞者は、1949年の湯川秀樹氏の物理学賞から真鍋氏まで25人を数える。そのうち2000年以降に限れば20人を占めており、国別でも米国に次ぐ2位となっている。
政府はかつて、01年度の科学技術基本計画に「50年間にノーベル賞受賞者30人程度」という目標を掲げた。後に数値は明記しなくなるが、これまでの受賞ペースなら達成は確実と見られている。しかし過去20年の日本人受賞ラッシュの業績の大半は、前世紀の研究なのが実情だ。
ノーベル賞級の画期的な発見は30―40歳代が多いという分析もある。現在の国の基本計画から、優れた業績が生み出されるかどうかは疑わしい。
近年、国の科学技術予算の抑制もあり、どの大学や研究機関でも研究者ポストが不足している。このため若手研究者は、不安定な有期雇用の博士研究員(ポスドク)のまま業績を求められるケースが増えている。将来の生活に不安を抱えた研究者に、画期的なテーマへの挑戦は期待しにくい。
若手のための環境を整え、“21世紀の日本発”の業績で未来のノーベル賞を狙ってほしい。21年の真鍋氏とは逆に、海外生まれの研究者が日本で成果を上げ、母国で栄誉をたたえられてもいいではないか。
厳しい財政事情の中でも研究開発への挑戦を絶やさない。日本はそうした国として、世界に貢献していくべきだ。
(2022/10/6 05:00)
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