(2022/12/7 05:00)
岸田文雄首相は2023―27年度の5カ年の防衛費を総額で約43兆円とし、増額する財源を「年末に一体的に決定」するよう関係閣僚に指示した。財源を確保しないまま、巨費を投じる5カ年計画を見切り発車することは許されない。首相は財源の議論を23年以降に先送ることなく、年内に明確な道筋を付ける指導力が求められる。
現行の中期防衛力整備計画(中期防)の総額27兆4700億円と比べ、1・5倍以上の増額になる。東アジアの一段の緊迫化に備えた必要不可欠な増額であると国民の理解を得る必要があるのはもとより、増額分の財源の確保は政府の責任として確実に遂行する必要がある。
政府の有識者会議は、防衛費の財源は「幅広い税目」による増税で賄うよう提言している。歳出改革を徹底し、国債に頼らず、国民全体で負担するべきとの提言を政府はしっかりと受け止め、議論を深めてほしい。
自民党内には、賃上げを制約する法人増税や、消費に影響する所得増税を直ちに行うことに慎重な意見が少なくない。世界経済の先行きを勘案すれば、そうした慎重論も一理あると言える。そうであれば、償還財源の確保を法律で担保した上で、国債を発行して増税を将来に先送りする「つなぎ国債」の発行なども視野に、財源の確保に努めてもらいたい。将来世代にツケを回す赤字国債とは異なり、財政規律を順守できるはずだ。
つなぎ国債を発行する際も、産業界の設備投資などに水を差す法人増税に偏ることがないよう、複数の税目に広く薄く課税することが政府に求められる。
欧州ではウクライナ情勢を受けて国防費の増額を決めたスウェーデンは酒税とたばこ税の増税などで財源を賄うという。財政事業が主要国で最悪の日本は安易な赤字国債の発行を慎み、こうした事例を見習いたい。
「規模ありき」との批判もある43兆円の次期中期防。歳出改革を尽くしたか、43兆円の中身は適切か、さらに安全保障の転換につながりかねない「反撃能力」の保有についても政府は国民に説明を尽くす責任がある。
(2022/12/7 05:00)
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