(2022/12/29 05:00)
自社株買いや増配などの株主還元策が高水準で推移している。2022年度の自社株買いは11月末に7・8兆円の取引枠が設定され、前年度を上回るのが確実視される。22年度の配当総額も過去最高の14兆円超が見込まれる。世界経済の後退懸念などから株式市場は21年度より軟調に推移しており、株主への配慮と資本効率の改善につなげているとみられる。業績堅調な企業は株主還元に加え、産業界で機運が高まる賃上げにも積極的に取り組んでもらいたい。
アイ・エヌ情報センターによると、22年度の自社株買い設定枠は11月末時点ですでに7・8兆円に達し、21年度の8・1兆円を上回る勢いを示している。また23年3月期の増配総額も手厚い手元資金を背景に過去最高を更新する見通しで、業績堅調な企業の株主還元が相次ぐ。東京証券取引所が4月に再編され、株主還元や資本効率向上に対する経営者の意識が高まったことも背景にあるとみられる。
足元の株価は、企業業績は堅調ながら、世界経済の減速を警戒して2万6000円台で推移している。1年前の21年12月平均の2万8000円台より軟調なため、株主に配慮した利益還元を推進したとも言えよう。
財務省がまとめた7―9月期の法人企業統計調査によると、全産業(金融機関を除く)の経常利益は前年同期比18・3%増の19兆8098億円と、同期としては過去最高を更新し、設備投資も同9・8%増と堅調だった。23年に日本は内需主導の成長が求められるだけに、企業は設備投資とともに賃上げを起点とした経済好循環を回したい。
自社株買いは米欧でも増えている。インフレ抑制に向けた金融引き締めによる株価下落を受け、株主要求が強まっている。ただ米国で8月に成立した歳出・歳入法に自社株買い課税が盛り込まれたように、賃上げや投資に回るべき資金が自社株買いに流出したとの指摘もある。
日本企業は景気下支えの要である賃上げに十分に目配りし、下請け企業の価格転嫁も適正化してもらいたい。中小企業の賃上げ余力も高める必要がある。
(2022/12/29 05:00)
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