社説/国益を考える(3)マネー動かし内需主導の成長を

(2023/1/5 05:00)

2023年の世界経済は減速から後退への局面変化が懸念される。日本は外需に期待できず、賃上げを起点とした内需主導の成長を目指したい。4月には日銀の新総裁が誕生する。国内景気を堅調に推移させ、新総裁が柔軟な金融政策を選択できる環境も整えておきたい。

米欧は歴史的なインフレ抑制に向けた金融引き締めを継続し、国際通貨基金(IMF)は世界の3割が景気後退に陥ると見通す。米欧は利上げ速度を緩和し、景気に配慮した金融政策を模索するものの、小幅な利上げが長期化することが想定される。中国もゼロコロナ政策緩和による新規感染者の増加が懸念され、中国観光客の訪日がいつ正常化するかも見通せない。

ただ米欧が金融引き締めを緩めたことで、日本や新興国の自国通貨安が是正され、輸入物価が引き下がる効果が期待される。すでに新興国に資金が戻り始め、日本は日銀が長期金利の事実上の利上げを容認したことで日米金利差はさらに縮小し、一時1ドル=151円台まで進んだ円安が足元では同130円台の円高基調で推移している。

日銀による金融緩和の縮小は出口戦略への地ならしとも指摘されており、政府による野放図な国債発行を日銀が引き受けてきた財政ファイナンスが是正されることも期待される。日銀の国債購入額が減って財政健全化が促されれば、社会保障への将来不安が緩和され、個人消費の喚起にもつながるはずだ。

日本は「失われた30年」に象徴される長期の低成長を受け、企業は賃上げより優先した内部留保の積み上げが500兆円超に達し、賃金が上がらない家計は1000兆円超の現預金を抱え、財布のひもが固い。経済好循環を実現するには、賃上げを起点に、滞っているマネーを動かすことが求められる。

短期的には23年春闘で好業績企業の意欲的な賃上げが期待され、下請け企業が物価上昇分を取引価格に転嫁できる環境も整えたい。中長期的には「学び直し」などで企業の生産性を高め、さらなる賃上げにつながる好循環を実現していきたい。

(2023/1/5 05:00)

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