(2023/3/2 05:00)
少子化が加速し、2022年の出生数が過去最少を更新した。児童手当の拡充といった「給付」だけでは大きな効果は期待できない。給付以前に、若者が安定的な「経済基盤」を築けなければ出産・育児に踏み切りにくい。非正規雇用の正規化などを通じ、将来への不安を拭い、展望を持てる社会に再生することが政権に求められる。
厚生労働省は22年の出生数(速報値、外国人を含む)が前年比5・1%減の79万9728人だったと発表した。80万人割れは調査を始めた1899年以降で初めて。国が予測していた2033年の80万人割れより11年も早い。コロナ禍で妊娠・出産をためらった側面はあるが、根底には複数の課題が絡む。国力や社会保障の持続可能性を危うくさせる問題だけに、岸田文雄政権は待ったなしの課題に審議を尽くす必要がある。
だが23年度予算案の衆院審議では、政権が最重要課題に掲げる「子ども・子育て予算」倍増について、どの予算項目を倍増させるのかは調整中との首相答弁が繰り返された。政府は3月末までに少子化対策のたたき台をまとめる。4月に統一地方選挙を控えてか、倍増する予算規模や財源について政府は慎重姿勢を崩しておらず、たたき台の内容も不透明感を否めない。
政府は6月に決定する経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に財源の方向性も示すとしている。統一地方選後、痛みを伴う財源まで審議を深め、効果的な対策を打ち出してほしい。
政府は異次元の少子化対策について、児童手当など経済的支援の強化、幼児教育・保育サービスの強化、働き方改革の推進の3本柱を掲げる。出産・育児を妨げる複数の課題に幅広く対応しつつ、とりわけ若者の経済基盤の強化に目配りしてもらいたい。例えば全労働者の4割を占める非正規雇用労働者は経済的な不安から未婚率が正社員より高い。非正規労働者の未婚率は30代後半で7割との調査もある。学び直しによる成長分野への労働移動・正規化を推進することは、日本の低い生産性を向上させることにもなるはずだ。
(2023/3/2 05:00)
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