(2023/4/12 05:00)
政府の有識者会議は、外国人技能実習制度の廃止を求めた中間報告書案をまとめた。途上国への技術移転を目的とした同制度は、事実上労働力の受け皿となっており、制度の目的と実態が乖離(かいり)している。同制度を廃止する一方、正面から人材確保・育成をうたった新制度の創設を求めた今回の案は、実態に即した考え方と評価したい。ただ、懸案である外国人労働者に対する人権侵害の解消が担保されることが大前提となる。
有識者会議は今秋に最終報告書をまとめ、2024年の通常国会への提出を予定している。
技能実習制度は途上国の人材を育成する国際貢献を目的に1993年に導入された。実習生は22年末に約33万人を数える。実習期間は最長5年だが、実習生の同業他社への転籍は原則認めていない。賃金不払いや暴力といった人権侵害があっても、雇用主を監督する監理団体が十分に機能していないケースも指摘される。失踪した実習生の不法就労も社会問題化している。
今回の中間報告書案では転籍制限を緩和する方向が示され、監理団体の認定要件を厳格化することも検討する。ただ安易に転籍を認めれば実習生が地方から都心に流れる地域格差などが懸念される。人権問題に配慮しつつ丁寧な議論が求められる。
政府は一定の専門性・技能を有する外国人を労働者として受け入れる在留資格「特定技能制度」を19年に導入している。人材難の12分野が対象で、転籍も可能だ。だが日本語能力などが問われ、22年末で約13万人にとどまる。今回の中間報告書案では、この制度と新制度を連動させるという。外国人が特定技能を取得しやすい制度としたい。
経団連は22年2月に「2030年に向けた外国人政策のあり方」をまとめた。国際的な人材獲得競争を見据え、外国人を「受け入れる」国から戦略的・積極的に「誘致する」国へと発想を転換する必要性を指摘した。自社および供給網全体で、人権リスクを抑える人権デューデリジェンス(DD)の積極的な実施も訴えていた。外国人から選ばれる日本でありたい。
(2023/4/12 05:00)