(2023/8/3 05:00)
建設機械の出荷が好調だ。日本建設機械工業会(建機工)によると、6月の出荷金額は前年同月比31・1%増の3409億円と32カ月連続で増加した。ウクライナ情勢を契機に、資源を安定調達するための鉱山開発がショベルなどの需要を押し上げ、部品不足のサプライチェーン(供給網)問題も解消したことが奏功した。建機業界は電動化や情報通信技術(ICT)を取り入れた建機の開発・実用化も推進し、収益重視の戦略で新たな成長軌道を追求したい。
建機工によると、6月の建機出荷額のうち輸出向けは前年同月比35・2%増の2459億円と32カ月連続で増加し、国内向けも同21・7%増の950億円で12カ月連続で増えた。地域別に見ると、北米が30カ月連続、アジアが28カ月連続で増加するなど、全9地域中8地域で増加した。鉱山ショベルの需要拡大が継続し、主要市場の北米は公共工事やインフラ整備などが旺盛な需要を支えている。
08年のリーマン・ショックから10年間、建機市場の主戦場は中国だった。だが中国が国産化・低価格化で市場を混乱させたことで、日系メーカーは脱中国を推進。極端な価格競争を回避できたことも出荷金額の増額につながっていると評価したい。
ただ大手建機の中には、米国をはじめ先行き不透明な世界経済を警戒し、下期を慎重に見る向きもある。デフレが懸念される中国の建機在庫がアジアに流れ、価格競争が激化する懸念もある。日系メーカーは電動化やICT建機といった高付加価値化を進めつつ、耐久性やメンテナンスサービスなど中国が弱い分野で存在感を発揮したい。
建機の電動化は脱炭素にも資する半面、リチウムイオン電池と原材料を中国に依存する課題を抱える。欧米と供給網を構築しつつ、充電インフラ規格の国際標準化に乗り遅れないよう電動化技術の開発を推進したい。
建機を自動制御するICT化は建設現場の人手不足にも対応し、潜在需要は大きい。ゼネコンや測量会社など現場とのシステム連携を進め、新たな市場を開拓することが求められる。
(2023/8/3 05:00)
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