社説/半導体など国産支援 地域の雇用・賃上げ効果も期待

(2023/10/24 05:00)

政府は「特定重要物質」と位置付ける半導体や蓄電池などを対象に、国内での生産を促す施策を相次ぎ講じる。国内生産比率を高め、海外からの調達に伴う経済安全保障上のリスクを軽減する。11月2日にも閣議決定する総合経済対策に盛り込む。地域での産業集積も進め、雇用や賃上げ効果も追求したい。

岸田文雄首相は23日の所信表明演説で、半導体などの大型投資に対し、2、3年以内に集中的に支援措置を講じると表明した。迅速な対応に期待したい。

政府は半導体工場などの建設に必要なインフラ(周辺の道路、工業用水、下水道など)を整備する自治体向けに交付金を新設する方針を固めている。北海道の鈴木直道知事は18日に西村康稔経済産業相と会談し、千歳市に建設するラピダスの半導体工場について、インフラ整備の協力などを求めていた。行政の支援による地域の産業集積が円滑に進むことが期待される。

政府は半導体や蓄電池などを増産する企業の法人税などを減額する施策も講じる。生産・販売量に応じて税額控除を受けられる「戦略物資生産基盤税制」を創設する方針で、電気自動車(EV)などに使われる蓄電池や半導体の国内生産を促すことで、脱炭素と経済安保を併せて推進することが求められる。

市街化調整区域でも特定重要物質の工場を立地できるよう規制を緩和する方針も決まった。同区域は原則として新たな開発を行わない区域で、建設は農林水産業や公益上必要な施設などに限られている。規制緩和により自治体が半導体工場などの建設を許可できるようにする。

地方での工場立地は疲弊する地域経済の底上げに資する。地方創生の観点からも促したい。九州フィナンシャルグループによると、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出により県への経済波及効果は2031年までの10年間で約6・9兆円に達する。北海道もラピダスを中核とする一大産業集積地「北海道バレー構想」を打ち出し、大きな経済効果を想定する。こうした好事例を増やし、経済安保にとどまらない効果も追いたい。

(2023/10/24 05:00)

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