(2023/10/31 05:00)
政府は11月2日にも総合経済対策を閣議決定する。物価高対策と賃上げ促進が大きな柱になる。生活者の可処分所得を引き上げ、デフレ脱却への糸口としたい。ただ所得減税や賃上げ促進税制など小手先の減税では効果は限定的とみられる。中小企業を含む産業界全体の賃上げの流れを継続できるかが大きな課題になる。総合経済対策に盛り込む中小企業の生産性向上や価格転嫁への支援策を効果的に機能させることが求められる。
政府は物価高対策として、電気・ガスやガソリンの価格抑制措置の期限を年末から2024年4月末まで延長・拡充するほか、事実上の賃上げとなる所得・住民減税と非課税世帯への給付を講じる。所得・住民減税は1人当たり年4万円、非課税世帯へは同7万円を給付する方針で、期間は1年を想定する。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストの試算では、これら減税と給付金による実質国内総生産(GDP)押し上げ効果は0・19%にとどまる。恒久減税でない1年限定の減税では効果は半減するという。与党内には複数年とする案もあるが、そうすると防衛財源である所得増税を25年度も実施できず、国債増発となりかねない。減税分のうち消費に回るのは2割との試算もあり、大きな経済効果は期待しにくい。
デフレ脱却には中小企業を含む産業界の持続的賃上げが欠かせない。30年ぶり高水準だった23年春闘の賃上げの流れを24年も継続したい。ただ総合経済対策に盛る賃上げ促進税制の延長・拡充は、中小の6割が赤字であることを勘案すると効果に限界があると言わざるを得ない。
中小企業は不足する人材確保に向け、やむを得ず「防衛的賃上げ」を行っている。賃上げ促進税制などの一過性の減税よりも、生産性向上に向けた投資への支援や労務費の価格転嫁を実現することが持続的賃上げにつながろう。政府は中小の省人化投資を後押しし、価格転嫁の実態を業界ごとに調査・公表するという。効果的な支援を講じ、連合が24年春闘で掲げる「5%以上」の賃上げ率に近づきたい。
(2023/10/31 05:00)
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