(2023/12/1 12:00)
月や火星の探査を目指す米国主導の国際探査計画「アルテミス計画」が本格化し、日本でも月着陸を目指す宇宙機に関する挑戦が続いている。多くの研究機関や企業が参入する中で、同計画のカギとなるのが米スペースXだ。11月18日(日本時間)には大型宇宙船「スターシップ」試験機の2回目の打ち上げを実施し、宇宙空間まで飛行したことを確認した。人類が他の天体に宇宙旅行できるようになる日は近いかもしれない。
スターシップは将来的に月や火星を飛行することを視野に入れている。大型宇宙船の飛行能力を向上させるために巨大な1段エンジンが搭載され、全体で約120メートルになる。現在は試験機の飛行実験を進めており、4月に実施した1回目の飛行試験では打ち上げから4分後に爆発。1段エンジンが切り離される前に試験が終了した。
スペースXのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は「数カ月以内に次の打ち上げを目指す。そのために多くのことを学んだ」と強調した。この時に得たデータを生かして2回目の打ち上げに臨み、今回は1段エンジンが切り離された後に宇宙空間まで到達したが通信が途絶えてしまった。次回の打ち上げに向けて改良を進め、スターシップの完成を目指す。
スターシップは人類の宇宙旅行も見据えており、衣料品通販運営会社「ZOZO」創業者の前沢友作氏らは同機で約1週間の「月旅行」に参加する。前沢氏は「2021年に国際宇宙ステーション(ISS)へ向かい、今度は月を目指す。楽しみにしてもらえるとうれしい」とコメント。ただ23年に打ち上げる予定だったが、今回の失敗を受けて年度内の月旅行は見送った。前沢氏は民間人初の月旅行者になる可能性が高く、スターシップの開発とともに目が離せない存在だ。
スペースXはISSに物資を輸送する宇宙船「ドラゴン」や有人宇宙船「クルードラゴン」、これらの宇宙船を軌道に乗せる大型基幹ロケット「ファルコン9」などを開発してきた。11年に退役した米スペースシャトルの後はロシアの宇宙船「ソユーズ」に頼っていた時期はあるが、現在では宇宙輸送技術では世界トップの実績を持つ。クルードラゴン1号機に搭乗した宇宙航空研究開発機構(JAXA)元宇宙飛行士の野口聡一さんは「クルードラゴンは操作がタッチパネル式であるなど最新の技術が盛り込まれており、従来機よりも使いやすい仕様になっている」と評価する。
同社は米ステラのイーロン・マスクCEOが02年に創設した宇宙関連企業。資金規模が膨大であることから技術力を持った人材を獲得でき、スピード感を持った開発ができている。宇宙輸送の功績が目立っているが、それに限らず衛星ブロードバンドインターネット「スターリンク」の構築も進めている。日本でのサービスも始めており、大規模災害時や海上・山岳地帯などでの高速インターネットの利用が期待される。
(2023/12/1 12:00)
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