(2024/1/23 05:00)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型の月着陸実証機「SLIM(スリム)」が日本初の月面着陸に成功し、国内のみならず海外からも称賛の声が上がった。だが探査機が月に着陸した時に太陽が当たっていない可能性などがあり、太陽電池の発電が確認できなかった。こうした状況にプロ・アマチュア問わず世界中の研究者が向き合う様子が参加交流型サイト(SNS)上で見られる。再びスリムが目を覚ますのはいつだろうか。(飯田真美子)
月面の取得データ、地球に送信確認
JAXAは探査機から届くリアルタイム情報「テレメトリー」を動画サイトで配信。スリムが月に着陸するまでの様子を管制室にいるような感覚で月着陸を見守ることができる新たな取り組みを実施した。JAXA宇宙科学研究所の藤本正樹副所長は「若手研究者が2年ほどかけて作った」と説明。世界で5番目となる月面着陸への挑戦だったこともあり海外の視聴者も多く、さらに詳細なデータをリアルタイムで公開したため実際に探査機がどのような状態であるかの解析を独自で進める研究者が見られた。
特に注目されたのは着陸時の探査機の体勢で、太陽電池がどの方向を向いているかという点だ。テレメトリーでは姿勢を制御するスラスターが上を向き、太陽電池が取り付けてある面が西に向いた状態であるという。探査機に太陽が当たる時間帯を計算した研究者も見られ、その一人である英国在住のアマチュア天文学者のスコット・テイリー氏は「24日以降にも太陽電池に充電できる可能性がある」と算出。同氏は地上局とスリムとのやりとりの電波も解析し、JAXAがスリムに向けて強い電波を発して呼びかけているとも指摘した。
またスリムから放出したアマチュア無線を利用して情報を送信する小型ロボット「LEV―1」について、和歌山大学の12メートルパラボラアンテナで電波の受信を確認した。さらに他国ではオランダのドウィンゲロープ天文台にある25メートルのPI9CAM局で受信に成功。データを解析したスペインのアマチュア無線技士のダニエル・エステベス氏は「モールス信号のようで、あまり見たことのない少し変わった電波だった」と強調した。
JAXAはバッテリーの電源の限界まで、着陸降下中や月面で取得したデータを地球に送ることができたと発表。太陽電池の復旧に向けても調整しているとした。世界中から注目されたスリム。もし探査機に太陽が当たれば、月面を調べる科学ミッションやデータ送信など追加ミッションができる。スリムが起きるまでもう少しかもしれない。
(2024/1/23 05:00)