(2024/11/27 05:00)
2025年度税制改正の焦点の一つが、中小企業の法人税を減税する特例措置の行方だ。複数の特例措置が24年度末に期限を迎える。中小企業の所得はリーマン・ショック後の3倍以上に増え、特例措置は一定の役割を終えたとの指摘がある。だが中小企業は原材料高、防衛的賃上げ、不十分な価格転嫁など、経営環境は厳しい。最低賃金の引き上げも控える。中小企業の実態に十分配慮し、特例措置は延長することが求められる。
中小企業は原則23・2%の法人税率について、所得のうち年800万円以下の部分は15%の軽減税率が適用されている。また成長志向の設備投資や、機械装置などの取得に税額控除する特例措置も講じている。これらの措置が24年度末で期限切れとなり、その扱いが焦点になる。
政府税制調査会(首相の諮問機関)が19日に開いた専門家会合では、特例措置の効果に懐疑的な意見も出された。財務省資料によると、中小企業の所得はリーマン・ショック後の09年度の9・6兆円に対し、22年度は31兆円にまで拡大した。ただ、この間、新規事業への投資は横ばいで推移していた。特例措置は、必ずしも中小企業の投資を促していないとの見方がある。
一方、経済産業省・中小企業庁はそれぞれの特例措置の2年延長を求め、日本商工会議所も延長ないし恒久化を要望する。雇用の約7割を占める中小企業が「稼ぐ力」を身に付けなければ、デフレ脱却の好機を逃しかねないと日商は指摘する。中でも法人税の軽減税率15%は例年100万社超が活用し、財政基盤を支えている。中小企業の約7割が赤字企業とされる中、法人税を納める黒字の中小企業支援は“延命”にも当たらない。
25年はトランプ米次期政権が発足し、世界経済の不確実性も高まる。石破茂政権は20年代に最低賃金を時給1500円に上げる高い目標を掲げており、中小企業の支払い能力が問われてくる。価格転嫁を促す下請法の改正はもとより、中小企業は税制の特例措置なども活用し、生産性・付加価値向上への取り組みをこれまで以上に進めたい。
(2024/11/27 05:00)
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