社説/中小に相次ぐ負担 「春闘」「最賃」支える政府支援を

(2024/12/3 05:00)

中小企業の負担増が懸念される。連合は2025年春季労使交渉(春闘)で中小企業に6%以上の賃上げ率を求め、石破茂政権は最低賃金(最賃)を20年代に時給1500円に引き上げる高い目標を掲げる。厚生労働省は、年収106万円以上で厚生年金に加入する「年収の壁」の撤廃を検討し、企業負担が増えかねない。価格転嫁の推進に加え、「稼ぐ力」を引き上げる一段の政府支援が求められる。

連合は、25年春闘の賃上げ率を全国平均で「5%以上」、中小企業は「6%以上」を要求することを決めた。24年春闘は全体で5・1%、中小企業は4・45%だった。大企業と中小企業の賃金格差を是正する狙いだ。

最低賃金のハードルも高い。石破政権は20年代に最低賃金の全国平均時給を1500円に引き上げる目標を掲げる。24年度の実績は前年度比5・1%増の1055円。あと5年で達成するには毎年7・3%の高い伸び率が必要だ。最低賃金違反には罰金などの法的拘束力があり、春闘以上に重い意味を持つ。

石破首相は来夏の参院選を見据え、賃上げ実績を積みたい意向とみられるが、経済界は中でも最低賃金の行方を警戒する。中小企業は原材料高や不十分な価格転嫁、防衛的賃上げなど、経営環境が厳しい企業が少なくない。加えて「年収106万円の壁」撤廃となれば、労使が保険料を折半する厚生年金の加入者が増え、中小企業の負担も増す。中小企業がやむを得ず採用を手控え、人手不足で収益が悪化する負の連鎖が懸念される。

労務費の増額分の価格転嫁はもちろん、中小企業の稼ぐ力を向上させる政府支援が欠かせない。石破政権は「買い叩き」要件を厳格化する下請法改正案を年内に、最低賃金引き上げに備えた支援を来春までにまとめるという。中小企業の生産性や付加価値が向上すれば、親企業との価格交渉力も高まるはずだ。

日本の最低賃金は主要国で見劣りし、雇用の7割を占める中小企業の賃金底上げは喫緊の課題だ。中小企業の支払い能力を高め、賃金も物価も上昇する成長型経済への移行を急ぎたい。

(2024/12/3 05:00)

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