(2024/12/5 05:00)
1987年に民主化した韓国で、時代錯誤のような「非常戒厳」が3日夜に宣布された。戒厳令は「戦時・事変」などの国家非常事態に限られ、行政・司法権などを軍隊の指揮下に置くことだ。少数与党で国政がまひ状態とはいえ、民主主義にあらがった行為と言わざるを得ない。野党6党は4日、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案を国会に提出した。国政の混乱が東アジアの安全保障や改善した日韓関係に影響しないか憂慮される。
非常戒厳の宣布は、80年の光州事件以来44年ぶりになる。当時、民主化を求める市民を戒厳軍が鎮圧し、多数の犠牲者を出した。尹大統領は軍ではなく国民に選出された大統領だけに、今回の判断は理解しがたい。国政のまひ状態も、まず熟議を尽くすことが民主主義の本筋だ。
3日夜の宣布を受け、韓国軍の兵士が国会議事堂に入り、議事堂前には抗議する多くの市民が集まるなど、一時は騒然とした。宣布から約6時間後に国会決議を経て非常戒厳は解除されたものの、議会・韓国内で尹大統領には厳しい視線が向かう。
尹大統領の「中間評価」と位置付けられた4月の総選挙で、与党「国民の力」が惨敗し、大統領の求心力は低下していた。物価高や高齢化、医師不足などを争点に最大野党が議席の過半を占め、それまで「独善的」だった尹大統領への批判も高まった。少数与党で予算案が通らないほか、野党から多数の政府官僚の弾劾訴追も発議された。尹大統領には、内乱を画策する野党の反国家的行為に映ったようだが、非常戒厳を宣布するような事態ではない。見当違いも甚だしいと言わざるを得ない。
尹大統領は2022年5月に就任し、対日戦略を大きく転換した。23年に元徴用工問題をめぐり、日本企業に命じた賠償を韓国側が肩代わりする解決策を発表。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も正常化された。25年には日韓国交正常化60周年を迎え、トランプ氏が米大統領に就任する。韓国とともに日本も内政の混乱を早期に収束させ、日韓および日米韓の強固な連携を再確認したい。
(2024/12/5 05:00)
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