社説/エネルギー基本計画(下)再生エネ「複数シナリオ」提示を

(2024/12/11 05:00)

第7次エネルギー基本計画では、原子力・再生可能エネルギーの電源構成を維持・拡大し、脱炭素と安定供給、経済成長を同時実現する方針が示される見通しだ。再生エネは火力を上回る最大電源に初めて位置付ける方向という。ただ再生エネなどの将来的な技術革新や電力需給を見通すのは困難で、電源構成は複数のシナリオを示すことを検討している。さまざまな将来像を想定し、状況変化に柔軟に対応できる計画に仕上げたい。

2023年度の電源構成は火力が68・6%、再生エネ22・9%、原子力8・5%だった。現行の第6次エネ基本計画では、「30年度」に火力を41%に抑える一方、再生エネを36―38%、原子力を20―22%に引き上げる目標を掲げた。今回の第7次計画は「40年度」の目標として、再生エネを4―5割程度、火力を3―4割程度、原子力は2割程度とする方向で調整中だ。

原子力は2割を維持し、再生エネは初めて火力を上回る最大電源に位置付けられ、Sプラス3E(安全性と安定供給・経済効率性・環境)が推進されると期待したい。ただ再生エネの技術革新の行方や電力需要の拡大ペースは見通しにくく、第7次計画の電源構成は「複数のシナリオを用いた幅のある内容」とすることを検討する。岸田文雄前首相が5月に指摘したように「前提の急変に即応できる柔構造」をいかに築くかが重要だ。

実証実験の段階ながら、曲げられる太陽電池「ペロブスカイト」の実用化が待たれる。40年度に同電池で20ギガワット(ギガは10億)、約600万世帯分の電力を賄う目標を第7次計画に盛り込む方向で調整している。原料のヨウ素は国内で産出でき、経済安全保障にも資する。浮体式の洋上風力も遠浅の海域が少ない日本に適しており、実用化に向けた機能向上や低コスト化、量産技術の確立を急ぎたい。

脱炭素化では、排出された二酸化炭素を地中や海底下に貯留するCCS事業を30年までに実現し、火力発電での水素・アンモニア混焼も推進する必要がある。日本は多様な手段を講じ、世界の脱炭素に貢献したい。

(2024/12/11 05:00)

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