キハラ・プリザベーション、脱酸性化処理で紙資料の寿命3-5倍に

(2024/12/11 12:00)

長期保存に寄与

  • 処理槽で対象の書籍を特殊な液に浸漬し脱酸性化する

キハラ・プリザベーション(さいたま市桜区、横島文夫社長)は、独自技術で図書館や大学などの紙資料の長期保存に寄与している。1980年代まで一般的だった酸性紙に対し、酸をアルカリ物質で中和し劣化を抑える脱酸性化処理技術「ブックキーパー」を施す。第二次大戦前・中・後の世相の記録などの継承は社会的課題であり、需要の捕捉に取り組む。

酸性紙が主流だった洋紙は明治期以降、日本の経済発展や文化の育成を支えてきた。印刷物の大量生産・消費時代は酸性紙の高いコストパフォーマンスが評価されたが、50―100年の間に劣化し、損壊する恐れがある。

ブックキーパーで処理すれば、紙の寿命は処理しない場合の3―5倍でしなやかさも保たれる。具体的には酸化マグネシウムの微粒子を特殊な液に分散させ、紙繊維に定着したら液剤は気化。その残留物が中和剤として機能する。脱酸性化手法は世界に複数あるが、ブックキーパーは酸化エチレンなどのガスを使わないため変色やにおいがなく環境に優しい。

同社の工場には垂直型と水平型の処理装置があり、顧客から預かった書籍などはサイズに適した処理槽に浸される。安全・円滑に処理できるよう事前に紙の簡易的な補修も行う。

ブックキーパーは過去約15年間に約21万冊の処理実績を持ち、顧客は大谷大学や毎日新聞社などだ。横島社長は「あくまで劣化する前に行う予防的対策」とし、歴史的価値を持つ書籍や地図などへの一刻も早い処理こそが保存に有効と説く。

技術開発した米プリザベーション・テクノロジーズの日本法人として設立された同社は2020年、図書館設備・用品のキハラ(東京都千代田区)の傘下に入った。デジタル保存媒体は時代で変化するからこそ紙の原本が重要だとし、キハラは「記録や文化を残すお手伝いをしている」(木原一雄社長)。東京大学経済学部資料室と開く資料保存アカデミーなどを通じ、同社はグループを挙げて長期保存の重要性を訴えていく。

(2024/12/11 12:00)

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