社説/「十倉経団連」の提言 40年見据えた政策の手掛かりに

(2024/12/12 05:00)

経団連の十倉雅和会長は、2025年5月に2期4年の任期満了を迎える。経団連が9日に発表した40年を見据えた提言は、十倉会長にとって総仕上げの「正論」の発信となる。成長だけでは社会課題は解決しない、分配なくして持続的成長はないと説いた。税と社会保障の再分配により経済格差を是正し、分厚い中間層を形成する重要性などを訴えている。提言された複数の施策を、今後のあるべき政策を探る手掛かりとしたい。

政策提言「フューチャー・デザイン2040」は、「成長と分配の好循環」により、公正・公平な社会を実現するよう訴える。真っ先に示した施策が「全世代型社会保障制度」。現役世代に負担が偏る社会保険料を抑え、富裕層への課税を強化する応能負担を求める。34年度までに5兆円程度の財源を確保し、それでも不足すれば消費増税や法人増税も検討するという。増税もタブー視せずに社会保障制度改革の歩みを進めたい。現役世代の将来不安が緩和されれば消費拡大を期待できよう。

分厚い中間層の形成に向けては「年収の壁」解消や選択的夫婦別姓の導入も求めており、石破茂政権の対応を注視したい。

「成長と分配」の「成長」では「イノベーション」の重要性も訴える。政府が先行投資し、民間投資を喚起すべきとした。グリーン・トランスフォーメーション(GX)や人工知能(AI)、バイオ、宇宙、エンタメ・コンテンツを成長産業と位置付ける。これら分野への政府の積極的な支援に期待したい。

エネルギー問題では、脱炭素の社会課題と経済成長の両立に向け、原子力発電所の再稼働・新増設などを要望。少子高齢化で疲弊する地域経済については「新たな道州圏域構想」を打ち出し、都道府県の枠を越えた広域連携を求める。地域格差も是正され、公正・公平な社会の実現にもつながると期待される。

十倉会長がキーワードに掲げる「社会性の視座」。「より良き社会なくして経済は成り立ち得ない」。持続可能な社会に向け、格差に象徴される社会の弊害を一つひとつ解消したい。

(2024/12/12 05:00)

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