(2024/12/13 05:00)
日本を代表する巨大企業の日本生命保険と日本製鉄。日生は約1・2兆円、日鉄は約2・1兆円の巨費を投じ、それぞれ米社を買収する。少子高齢化が進む日本市場に対し、人口が今後も増える米国市場で事業拡大に臨む戦略は類似する。両社とも新たな成長軌道を描くと期待したい。ただ日鉄の買収計画は米国の政治介入で阻止されかねない。日本企業の今後の対米投資にも影響を与えかねず、米政権には公正な判断を強く求める。
日生は2035年度までに、本業のもうけである基礎利益を約1・4兆円に倍増させる計画を掲げ、海外事業がけん引役となる。米国は世界最大の生命保険市場で、11日には米保険会社レゾリューションライフを約82億ドル(約1・2兆円)で買収すると発表した。買収額は保険業界で過去最大になるという。
国内生保市場が伸び悩む中、大手生保は海外事業や周辺の介護・ヘルスケア分野などを強化している。事業の拡大均衡がどこまで広がるか、注視したい。
日鉄も国内市場が縮小する中、USスチールを141億ドル(約2・1兆円)で買収する計画だ。日鉄として過去最大の買収案件で、インドや東南アジアとともにグローバル戦略を進める戦略を描く。だが買収計画は米大統領選の政争の具とされ、全米鉄鋼労働組合(USW)による合理的根拠のない買収反対が現実のものとなりかねない。
米メディアは10日、バイデン米大統領が近く買収阻止を表明すると伝え、日鉄は「公正な結論を得るために、あらゆる手段を検討し講じていく」との声明を出した。買収をめぐる対米外国投資委員会(CFIUS)の審査期限は23日とされ、公正な判断が下るか注視したい。だがバイデン氏が仮に買収を承認しても、25年1月にはさらに強硬なトランプ氏が大統領に就く。
日鉄はUSスチールの雇用と生産を守り、同社製鉄所への巨額の追加投資も表明した。買収阻止なら、USスチールは製鉄所の閉鎖も検討する。日米双方に資する、同盟国の企業による買収計画が異例の不承認へと傾くのか、行方を憂慮する。
(2024/12/13 05:00)
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