国際ロボット展の歩き方How to look around the exhibition hall of iREX
【記者の注目点】日刊工業新聞社の担当記者による、今年の「国際ロボット展」
見どころ紹介・産業用ロボット(IR)編
2年に1度の世界最大規模のロボット専門展「国際ロボット展」が11月29日に東京・有明の東京ビッグサイトで開幕する。今後のロボット開発の方向性を示す重要なイベントだ。産業用ロボットでは人のそばで作業できる「協働ロボット」の進化に期待が高まる。一方、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)など新たな技術を取り込み、ロボットを含めた工場内の機器を一つのシステムとして高度化する動きも注目される。
産業用ロボットゾーンの開催規模は、前回の2015年と比べ684小間増の2012小間と過去最大規模となる。今回は初の試みとしてメーカーの枠を超えた合同展示を計画。テーマは”人に優しい社会を実現するロボット”で、同展示会の橋本康彦運営委員長(川崎重工業常務)は「人と共存するロボットに注目してほしい」と期待を示した。
これまで産業用ロボットは安全面の配慮からロボットと人を安全柵で隔てる必要があったが、安全機能の向上などで人のそばでの作業が可能になった。可搬質量35kgの高可搬の協働ロボットを世界で初めて開発したファナック。4月にはスマートフォンの側面保護カバーのキズを検査する新たな協働ロボットを披露した。ロボットが自動でカバーをつかみ、固定カメラで全周を撮影してキズの有無を判別する。判定のキモとなるのがAIの深層学習で、何千枚かのサンプルを使いキズがあるかないかを示すことで、自ら判別できるようになる。安川電機は協働ロボット「モートマン-HC10」を6月に投入。川重は双腕の水平多関節(スカラ)協働ロボット「デュアロ」を展開。アームとロボットを制御するコントローラーを一体化し、キャスターを搭載して置き場所の自由度を高めた。
海外勢ではドイツのクカが医療用協働ロボット「LBR Med(メッド)」を開発。各関節に高精度なトルクセンサーを搭載したことなどで、繊細な力加減や高い安全性を実現した。日本でも今秋から販売を本格化し、超音波や内視鏡検査などでの利用を見込む。スイスのABBは双腕型の協働ロボット「ユーミィ」を販売。家庭用の100Vの電源でも稼働する導入のしやすさやコンパクトな設計が支持され、「世界的にも日本での販売が伸びている」(同社幹部)という。各社が独自の切り口で展開する協働ロボット。今回の展示会では「性能や用途で進化した人との共存ロボットが示されるはず」(ロボットメーカー幹部)との見方が多く、各社の開発競争が熱を帯びる。
IoTの活用も注目される。ファナックは工場用IoT基盤(プラットフォーム)「フィールド・システム」の運用を10月にはじめた。ロボットなど工場内のあらゆる機器をつないで稼働データを収集分析し、生産性の向上や予防保全の高度化などを実現できる。2018年3月末からAIの活用も予定。例えばバラ積みされたワーク(加工対象物)をロボットで取り出して次の工程に移す作業では深層学習を適用して効率化。さらにIoTで複数のロボットをつなぎ学習効率を高めることなどを想定する。
安川電機はロボットやサーボモーターなどのハードウエアと、稼働データを活用するソフトウエアの技術を融合して生産を支援する事業に乗り出す。ロボットやモーター、インバーターといった生産ラインの核となるFA(工場自動化)製品を多く製造業に納入している実績をいかし、個々の製造現に応じたキメ細かい支援を提供する。ABBも工場内の複数のロボットをネットワークでつなぎ状態を監視するサービスを展開。負荷を分析して遠隔でサポートする機能などを提供する。製造現場のビッグデータをどのように活用するかが問われるなか、各社が提案するIoT戦略が生産改革を進めるヒントとなりそうだ。