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株式会社電力シェアリングは、徒歩や自転車へのモダルシフトによりマイカーの乗り控えを促すデコ活・ナッジ実証を実施

(2024/8/15)

カテゴリ:商品サービス

リリース発行企業:株式会社電力シェアリング

株式会社電力シェアリングは、徒歩や自転車へのモダルシフトによりマイカーの乗り控えを促すデコ活・ナッジ実証を実施

脱炭素社会実現を目指す新しい国民運動「デコ活」の下、移動の脱炭素化を促す環境省ナッジ社会実証実験事業を実施

株式会社電力シェアリング(本社:東京都品川区、代表取締役社長:酒井直樹)は、脱炭素社会実現を目指す新しい国民運動「デコ活」の一環として、国民が自発的にモビリティー分野でのCO2排出量ゼロ化の選択をできるようなナッジ実証を、環境省の委託を受けて実施致します。
政府の取り組み

脱炭素社会実現を目指す新しい国民運動「デコ活」

デコ活の取り組み

デコ活」とは、「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」の愛称であり、二酸化炭素 (CO2)を減らす(DE)脱炭素(Decarbonization)と、環境に良いエコ(Eco)を含む"デコ"と活動・生活を組み合わせた新しい言葉です。
環境省の「デコ活」紹介サイト: https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/

マイカー等によるCO2排出量の削減

2022年度の国民一人当たりのCO2排出量は年間1,838kgで燃料種類別にはガソリンが24.1%、軽油が1.3%で、マイカー由来のCO2排出量の削減が喫緊の課題となっています。

令和6年5月に閣議決定された第六次環境基本計画では、持続可能で魅力的なまちづくりに向けて、都市のコンパクト化や持続可能な地域公共交通ネットワークの形成、鉄道を始めとする公共交通の利用促進、安全・安心な歩行空間や自転車等通行空間の整備等は、自動車交通量の減少等を通じて CO2排出量の削減に寄与するとともに、中心市街地の活性化や徒歩・自転車利用の増加による健康の維持・増進等につながることが期待されるとしています。

また、生活サービス機能や居住の誘導と公共交通ネット ワークの形成を連携して取り組む「コンパクト・プラス・ネットワーク」の取組を推進し、徒歩や自転車で安全で快適に移動でき、魅力ある空間・環境を整備することなどで、自動車交通量の減少等を通じて、温室効果ガスや大気汚染物質の排出削減に寄与するとし、さらに、これらの施策による環境負荷の削減効果を「見える化」 していくこと等を通じ、都市のコンパクト化を推進していくとしています。
ナッジ等の行動インサイトの活用
環境省では、こうした脱炭素への取り組みへの市民の自発的な参画を促すために、ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)を始めとする行動科学の知見を活用してライフスタイルの自発的な変革を創出する新たな政策手法を検証するナッジ実証事業を進めています。

当社では、独自のナッジモデル:移動版を用いて様々な手法を織り込んだiPhoneのネイティブ・アプリを独自に開発し、全国のモニターに利用いただき、徒歩や自転車へのモダルシフトによりマイカーの乗り控えを促す社会実証実験を実施いたします。

移動(人流)の脱炭素化
国民の移動によるCO2の排出量は、1.全国で1年間に走行する車両(鉄道・自動車)の単位走行距離(km)当たりの平均CO2排出量(kg-CO2/km)、2.車両の総台数(台)、3.車両1台あたりの走行距離(km/台)を掛け合わせて算出されます。

従って、排出量の削減には3つの手法があります。


移動によるCO2排出量を削減する3つの軸

1.車両の走行距離1km当たりのCO2排出量を減らす。

 これをさらに細分化すると
(a)燃費を上げる(b)燃料当たりの排出量を下げる(EV/FCV化)(c)EVならば再エネ比率の高い電力で充電する(FCVならばグリーン水素を用いる)(d)EVならば再エネやオフセット証書を引き当てて、再エネ100%で充電(ゼロドラ化)する

2.車両の総台数を減らす(国民の総移動距離が変わらないなら、1台あたりの乗車人数を増やす)

 これをさらに細分化すると
(a)マイカーの単独運転ならライドシェア等多人数で移動する、(b)バス・鉄道に乗る (c)自転車や徒歩8(d)上記を組み合わせたマルチモダル(パーク&ライドなど)で移動する

3.車両の走行距離を減らす

 なるべく移動しない。あるいは近場で用事を済ませる(コンパクトシティ化)

これを別の図で示すと以下のようになります。



コンパクトシティ化による移動でのCO2の削減


マイカー単独利用よりも、2人でシェアライドすれば単純計算では半分で済みますし、列車・バスを利用すればさらに減ります。また、同じ移動手段でも、遠くの目的地に行くよりも、近場で済ませれば、それだけ排出量が減ります。


EVの昼充電でのCO2削減

一方、ガソリン車をEVに置き換える、充電を再エネ等の多い時間帯に行う、あるいは再エネ等で直接充電するなどでも排出量は減ります。(上の2図ではベースが異なるため、数値が一致していないことに留意。また、生産・廃棄時の排出量は考慮していない。)

ナッジ実証実験の概要

上記の問題意識を踏まえ、当実証事業では過年度より以下の実証を実施しています。
- 長野県塩尻市等の協力を得て、マイカーから鉄道やバス等の公共交通機関へのモダルシフトを促す実証(プレスリリースはこちら)
- EVシフト、昼充電、ゼロドラ化実験(長野県白馬村・テスラオーナーズクラブJapan・日本EVクラブ・エネチェンジ・GoGoEV・EVごはん・EV昼充電推進協議会等の会員・顧客を対象に様々なシチュエーションで社会実証を繰り返し実施中)
- 和歌山県那智勝浦町色川地区の36世帯の住民同士でのシェアライドを促すランダム化比較試験(後述)
- 全国モニター1,200人を対象に、各人の自家用車利用回数をAI予測し、スマフォに提示するシステムを開発し、徒歩・自転車や公共交通機関の活用などで自家用車の利用を手控えた回数に対し、金銭ポイントを付与する8週間のランダム化比較試験(後述)

シェアライド・ナッジ実証(和歌山県那智勝浦町色川地区)
- 交通の便が悪い和歌山県那智勝浦町色川地区に往訪し、36世帯の住民同士でのシェアライドを促すランダム化比較試験を実施し、その効果を実証した。
- 住民同士のシェアライド事業の説明会・打ち合わせを5回開催し、地区住民に呼びかけ、話し合いを重ね、地区の1割程度に参加いただいた。
- 住民との対話を通じ、マッチングアプリを開発し、実験を行ったところコミットメント・ランキング等の介入施策を講じた群の「乗ってください」「乗せてください」マッチング成立件数が有意に多かった。








全国モニター対象実験
- 全国のモニター1,200人(マイカーを運転し、代替公共交通機関がある人)を被験者とする3群X400人計1,200人のRCTを、R5年9月14日~11月8日の8週間(後半4週間の介入期間)実施した。
全てのモニターに、独自開発したスマフォアプリをインストールいただき、日々の移動履歴(発着日時、発着場所、移動手段など)を自動収集した。




- 介入群1・2の前半4週間の自家用車の利用回数実績から後半4週間の利用回数をAI機械学習モデルを用いて予測し、後期開始時にアプリ上に表示した。
介入群1・2のモニターには、表示された予測値をもとに、後期の自家用車利用回数の目標値をスマフォアプリ上で宣言させた。目標宣言後のアプリ上には、予測値、目標値とあわせて後期の累積利用実績値が表示され、モニターは実績値を日々確認することができる仕様とした。
- 実証実験終了時に、後期の自家用車の累積利用実績が、目標値以下であった場合には、金銭的価値のあるポイントを付与した。





実施結果
- 各群の介入前後のマイカーの平均利用回数を差分の差分法で検証した。
被験者全体での有意性は確認できなかったが、女性に限ると、対照群に比べて介入群2(目標設定と金銭インセンティブ)では自家用車の利用回数の減少幅が有意に大きかった(p値=0.005)。




女性は男性に比べて買い物と家族の送迎目的での自家用車の利用頻度が有意に多かった。(p値=0.006~0.012)



先行研究

Ariella Kristal et al.(2019)“Why It’s So Hard to Change People’s Commuting Behavior”は、欧州の空港従業員へ、マイカー通勤から鉄道への転換を促す様々なナッジ介入施策をRCTで検証したがどれも有意な効果がなく、その実現は強制的な措置でしかほぼありえないと結論付けている。
は、モバイル・アプリが電車・バスの利用判断を容易にする効果を示した。

Franssens et al. (2021)はオランダのバス車内でバス利用が好環境であるとのメッセージを表示することで、バス利用率が高まることを示した。

Dea van Lierop (2021)は、モバイル・アプリが電車・バスの利用判断を容易にする効果を示した。


Anagnostopoulou et al., (2020)は、「今日は良いお天気なので、自転車で出かけませんか?」というメッセージの有効性を示した。

Sina Zimmermann(2022), “Motivating change in commuters’ mobility behaviour: Digital nudging for public transportation use”では、ドイツで行った実証実験で、通勤時にマイカーを利用している被験者への、公共交通機関へのモダルシフトを薦めるメッセージは、通勤時間が30分以内の被験者においては有効であることを示した。

Bauer et al. (2018)は、米国での「みんなで自家用車利用を手控えようチャレンジ」で、参加世帯の自家用車利用が27%減少したことを示した。

国土交通省は公共交通利用を促すナッジRCTを行った(R4)。実験の質は高くエビデンスは複数あるが、海外の実証研究に比して、得られた知見の社会実装への展開可能性は限定的。

先行研究を踏まえた考察
当実証実験の分析結果および、先行研究から得られた知見は以下の通りである。ただし、国内での有益な知見は少なく、以下はいずれも海外事例なので必ずしも国内適用が可能とは限らないことに留意が必要である。
- 通勤目的のマイカー利用を抑制するのは困難
- しかし、近距離通勤者への抑制介入は比較的容易
- 移動アプリの利用と態度変容効果は相関がある
- 「よいお天気なので自転車で」訴求は有効
- バス車内での環境貢献メッセージは有効
- 「皆でマイカーを控えようチャレンジ」は有効

令和6年度実証実験に向けた仮説
令和6年度実証実験に向けて2つの仮説を立てた。

仮説1
R5実証で得た知見と、先行研究から、特に地方部では近距離・非通勤用途(買い物)等のマイカー乗り控えは高齢者を含めて比較的容易であり、またその際、「自動車から徒歩・自転車への転換は健康によい」と訴求することが有効との仮説を立てた。

その仮説検証に向けて当社が蓄積したデータ等から以下のエビデンスを得た。

実験参加者の移動ログ人流をAI解析したところ、1.100m~1km未満の至近距離でも少なくない人が自動車を利用し、2.都市部に比して地方部はその割合が顕著に高いことが判った。

例えば、0.5km未満の距離の移動における自動車利用割合は、東京都でも6.8%あるが、長野県塩尻市では22.2%と3倍以上である。

1.0km未満の距離の移動では、東京都が25.5%であるのに対し、北海道では65.0%、塩尻市では58.9%と約2.5倍である。




国土交通省の全国都市交通特性(アンケート)調査(R3実施・R5.11結果公開)でも、地方都市圏では、100mの移動では12.0%が、1km未満の移動では33.7%が、2km未満では52.8%が自動車を利用している。公共交通の不便さからのマイカー利用習慣が、それが阻害要因とならない至近距離移動にも波及している。俗にいう「地方の人は都会の人ほど歩かない」傾向が裏付けられている。


上図:国交省調査資料より引用 下表:当社作成

当社は、関東首都圏において、市町村ごとに、どの市町村へどのような移動手段で何km移動したかの10か月分の週次ODデータ(NTTドコモ社から購買)を用いて、 (株)パパラカ研究所山根所長の支援を受け分析を行っている。分析結果概要は以下の通り。(上表参照)

- 大都市圏・大都市周辺都市(国勢調査分類)の自動車利用比率は、域内・域外ともに有意に低い。
- 移動出発市町村および到着市町村の鉄道の数と自動車利用比率には負の相関関係がある。
- 65歳以上世帯の割合が高い市町村を出発地とする移動の自動車利用比率は域内(都県内)移動、域外(都県外)ともに有意に高い。


地方部は都市部よりもマイカー利用割合が高く、また、公共交通インフラへのアクセス状況に影響されることが示された。
高齢者の移動態様

当事業者は、上記分析や、R5実験のデータ解析から、高齢者のマイカー利用率は、他年代に比して有意に高いことをエビデンスをもって示した。

また、上記国交省調査では、60歳台では、自宅に車がある者ほどよく外出している。これは、「車で不要な外出をしている」、「車がないので家に引きこもらざるを得ない」の両方の解釈が可能であり、慎重な見極めが必要である。

70歳台免許非保有者と全年齢との平日の移動率の差は、鉄道駅・バス停と自宅との距離が離れているほど拡大している(同調査)。免許非保有者は駅・バス停が遠いほど家にこもりがちになる。

三大都市圏では60歳台が最も自動車を利用している。昭和の3C世代であり、車への愛着が強いまま高齢化した可能性がある。地方都市圏も含め他の世代は利用率が低いことや、地方都市圏では22年前の60歳台から激増している状況を鑑みれば、60歳台は乗り控え余地が大きい可能性がある。


国交省調査資料より引用


上記をまとめれば、1.マイカー利用割合が大きい高齢者の乗り控え余地は大きい可能性があるが、2.各人の心身状態等の特異性への配慮や、引きこもりによるQoLの低下を招かないよう注意深く対処する必要があると考える。
買い物・送迎の乗り控えの可能性
移動目的別(同調査)では、通勤では自動車利用割合が地方都市圏に比して小さい三大都市圏でも休日の買い物では、その差が縮まり53.8%が車を利用している。公共交通へのアクセスが良くても遊興目的でマイカーを利用している可能性がある。

国交省調査資料より引用

仮説2
COVID-19禍で感染リスクを忌避して自動車に乗り換えた層の一部は、再び鉄道にシフトさせることが比較的容易との仮説を立てた。

この仮説は、以下の当社が蓄積したデータ等のエビデンスに基づく。

当事業者は、東京大学の協力を得て、NTT携帯電話GPS人流データを取得し、これを同社独自の被験者データや自治体の保有バス乗降客データと組み合わせるなどして、国民の移動態様について、様々な視点から研究している。

下図は、各都道府県を出発点として居住人口あたりの県境を跨いだ人流の、2019~20年の10か月間の週次推移である。緊急事態発令後に広域人流は激減した後、元の水準に戻らなかったことを示している。


各都道府県を出発点として居住人口あたりの県境を跨いだ人流の、2019~20年の10か月間の週次推移(当社作成)


鉄道輸送統計月報(下表)では、R4.12の鉄道旅客数は、17.9億万人で、前年同月比4.9%増、2019年同月比14.4%減であり、総距離数では、296億人キロ(前年同月比7.7%増、2019年同月比15.3%減であり中長距離を中心に未だ旅客が戻り切っていない。

国交省調査(下図)は、COVID-19禍後、鉄道・バス利用が自動車(同乗)と徒歩に代替されていることを示している。


鉄道輸送統計月報(上表)国交省調査(下図)より引用


当社および国交省調査データは、COVID-19感染リスクを忌避して、マイカーに乗り換えている習慣が定着化した可能性を示唆しているが、

1.リスク選好が変わり固定化した層と、
2.リスク選好は戻ったが惰性でマイカーに乗り続けている層

が混在していおり、2.の層には広域移動における鉄道の利用を促すナッジが有効である可能性があると考えている。
令和6年度実証計画
上記の知見を踏まえて、令和6年度マイカー乗り控えを促すナッジ実証実験を以下の通り複数回実施する。

国民の移動に関する実態やCO2排出状況等の情報をデジタルで客観的に収集し、データをAIで解析して国民に対して移動履歴や将来の移動予測を見える化する技術を高度化させる。

行動に応じてナッジ等の行動科学の知見を活用した金銭的・非金銭的インセンティブを付与し、一人ひとりに合った快適でエコな移動手段を提案し、無理なく持続する、脱炭素に向けた高度な行動変容を促進するBI-Techモデルを構築し、ランダム化比較試験等の手法を用いて実証する。

令和5年度のモニターからスマフォUI/UXに関する以下を含む課題が示されたため、これに対応してシステム・アプリをアップデートする。
- 位置情報をリアルタイムで取得するので、電池の消耗が早いが何とかならないか。
- 移動手段判定のアルゴリズムが正確でない場合がある。


上記の分析結果から感応性が比較的高いと思われる、「近距離でマイカーを利用する層に対して徒歩や自転車へのモダルシフト」を促す予備実証をまず実施し、その結果を踏まえて、本格実証実験を実施する。この際、高齢者の引きこもり等、QoLを毀損しないよう留意する。


R6実証で用いるアップデート中のアプリUIのイメージ


テレワークの促進

また、「デコ活」においてはテレワークの実践を主要7領域の一つに挙げられていることから、マイカーでのオフィスへの通勤からテレワークへの転換によるマイカー利用回数の削減についても併せて促すことも検討する。この際、自宅での空調や照明利用によるCO2排出増とオフィスでの排出減も考慮したネットでの削減効果についてもモデルを構築して考察する。


「デコ活」の7つの領域の一つにあげられている「テレワークの実践」の促進策について検討


令和7年度には、テレワーク推進のためのナッジ手法や、飲料メーカーのウオーキングアプリや航空会社のマイレージ連携サービスなどの各種商用事業モデルを分析・検討の上、テレワークを推進する企業や、交通事業者や沿線事業者などの地域広告事業・官民連携モデルも含め、事業モデルを構築し、POCを行い、令和8年度の商用化を目指す。


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